基盤技術 地球環境
国内外のインフラ等の社会基盤整備や都市開発事業等において、開発と環境の調和を図るために、環境アセスメントに係る調査、予測、評価、環境に係る計画や環境の保全、創出に係る企画、調査、設計を行っています。また国内においては、環境分野の事業として自然再生事業や環境緑化事業、海外においては、大気および水質環境の改善、森林・生態系保全・再生、廃棄物管理に係る調査・計画、政策・制度整備、施設設計、事業実施支援、人材育成・能力向上に取り組んできました。
近年は、気候変動適応、脱炭素、生態系保全、循環経済、持続的社会の形成等の地球規模の課題の解決に向けて、再生・新エネルギー導入支援、二国間クレジット制度(JCM)や自主的クレジットを活用支援、人権・環境デューデリジェンス、生物多様性保全等に係る国内外の官・民での取り組みに携わっています。
主な技術サービス
道路事業やダム事業などの社会インフラ整備に関わる事業に係る環境へのインパクトを事前に調査・予測・評価し、環境へ配慮しながら事業を実施するための仕組みが、環境影響評価制度です。我が国の環境影響評価は、環境影響評価法や各自治体の環境影響評価条例に基づき実施され、また海外のODA事業においてもJICAや世銀など国際機関の環境社会配慮ガイドラインに準拠し実施されますが、長期にわたるインフラ整備事業に対し、環境調査の実施、予測評価、保全対策の実施、フォローアップなどが必要となります。我々は、国内のみならず、世界各国で様々なインフラ整備事業のフェーズに応じた環境配慮のための調査・予測・評価、保全対策の実績を多数有しており、それぞれの事業特性や地域特性に応じた的確な技術サービスを行っています。
道路事業は都市計画手続きに合わせて行われるため、工事から供用開始まで長いもので10年以上を要することがあることから、事業の進捗に合わせて、随時必要な調査・検討が行われています。代表的なものとしては、将来推計交通量の見直しによる大気汚染や騒音の再検討や、レッドデータブックの見直しによる重要な動植物の再抽出や保全対策の検討・実施などが挙げられます。これらの調査の実施にあたっては、環境影響評価のみならず、事業の進め方や関係法令など、広範な知見や技術力を必要とします。当社は、環境影響評価フォローアップに豊富な実績を有しており、事業特性に応じた的確な技術サービスを提供致します。
これまで日本の河川では、洪水対策のための河川事業が行われることにより、河川独特の自然環境が失われる例が多くありましたが、近年では河川の自然環境を保全し、あるいは失われた自然環境を取り戻そうという試みも多く行われています。 河川環境の保全・創出にあたっては、河川の環境が移動する河道や変動する流量条件といったダイナミックな条件の下に成立していることを十分に理解し、活かした計画とすることが重要です。
このため、河川の魚類や底生生物、植物などの調査を十分に行うことに加え、これらの動植物の生息・生育基盤となる物理的な環境の調査や評価、将来の予測も必要です。さらに土地利用が高度化した日本では、周辺の土地の安全性や、人と河川との関わりを確保することが大前提となります。
当社は、多くの技術分野の技術を結集し、衛星画像を用いた河道内植生の把握等の研究開発も行いながら、河川に求められるさまざまな機能を高い次元で実現します。
都市型大規模開発事業は、高層ビルの建設事業に伴い発生する交通量、ビル風などの環境への影響が懸念されるケースが多くみられます。当社は、六本木六丁目再開発(六本木ヒルズ)、スカイツリー建設事業に伴う環境影響評価をはじめとして、都市型の大規模開発事業に係る多くの環境コンサルティングを実施しています。首都圏では、東京都、港区、川崎市などにおいて多くの実績を有しており、各環境部局との調整に関しても豊富な実績を有し、円滑な事業の推進を支援しています。
また、事業者と住民との接点となる住民説明会は、事業者と住民が直接対話できる重要な機会です。当社では、パンフレットなどの説明資料の作成から、説明会当日の会場設営・運営までを総合的な実施が可能です。
開発事業の実施に伴い、環境への配慮として影響の低減のための事業計画立案を提案しますが、レッドデータブック記載種等の希少動植物等への影響が懸念された場合、移植等の代替措置を検討・実施が必要となります。これらの動植物の移植等の代替措置は、対象の個体数が非常に限られ、また移植や代替措置に関する知見が十分でないことがあり、効果の不確実性を極力最小化する必要があります。そこで当社では、対象種の生態特性を十分に把握した上で代替措置等の保全計画を立案し、不確実性に伴う移植のリスクを軽減し確実に実施します。
希少植物の場合などは、必要に応じて播種や挿し穂などによる増殖や移植実験も組合せ、また、対象種の移植適地が確保できない場合は、移植先の整備計画も含めて検討します。希少猛禽類の保全検討では、代替巣の設置による保全対策の実施、IoT活用による遠隔監視システムの導入など、豊富な経験と技術開発ノウハウにより必要な技術サービスを提供します。
当社では、道路・河川等の事業分野の技術者と、環境影響評価、自然環境の専門技術者の連携により、事業の段階に応じた課題と対応策の早期提案を行うことで、事業実施と自然環境保全の両立を図ります。
我が国は、2020年に2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言し、現在、省庁のみならず地方公共団体や民間事業が連携し、脱炭素化への取り組みが加速化しています。特に、地方公共団体では各地域のまちづくりや防災レジリエンス強化等の地域課題を再生可能エネルギーの導入・活用により解決を目指す取り組みが活発化しており、当社ではこれらの地方公共団体の脱炭素化に向けた計画策定支援や、再エネ導入、水素活用や蓄電池導入など、脱炭素化に向けた多様な取り組み支援等を行っています。環境技術者だけでなく、エネルギーに係る専門技術者と連携し、国の補助金申請のサポートや、事業化に向けた伴走支援などの技術サービスを提供しています。なお、民間のエネルギー事業者が主導する風力発電事業や太陽光発電事業などに際しては、環境への配慮のための環境アセスメントの実施、環境保全対策の提案・検討・実施など、地域と共生する再エネ事業に向けた技術サービスを展開しています。
都市レベルでの脱炭素化支援として、国内外の官民ネットワークやインフラ整備等における知見を活かし、日本の都市(地方公共団体)と協力して我が国の脱炭素技術・ノウハウを海外都市へ展開するべく、都市間連携事業の実施を支援しています。とりわけ、海外都市における具体的な脱炭素事業の推進としては、民間企業によるJCM設備補助事業の実施を支援しています。また、特に民間企業の脱炭素化を支援するために、国内外のパートナーと連携して環境十全性の高いカーボンクレジットの取得や創出に係る各種調査や事業実施の支援を行っています。脱炭素化分野は日進月歩であり、最新の動向や技術、制度に係る情報を常にアップデートしながら、市場・顧客ニーズに合致したタイムリーなサービス提供に努めています。
途上国の多くでは、経済開発が優先され地域環境の汚染、特に大気、水質、土壌汚染の問題が顕在化しています。多くの場合、汚染状況の把握と対策が十分でなく、開発に伴う環境問題や環境汚染による影響が大きな社会問題となっています。当社は、途上国における大気・水質・土壌汚染に係る調査や必要な対策を含んだ環境管理計画の作成支援、並びに関連政府機関による環境管理計画の実施支援と人材育成に長年にわたり取り組み、途上国の都市・地域環境の改善に貢献してきました。
また途上国ではいまだ豊かな森林や生態系(沿岸を含む)が多く残るものの、経済開発に伴う伐採、企業活動の拡大や人口増加に伴う土地転換や違法開発等によって、貴重な森林資源や生態系が危機に瀕しています。当社は、途上国を中心に森林保全・再生、保護地区や生態系の保全・改善、生態系サービスの改善・強化による地域の気候変動に対する強靭性強化、森林減少・荒廃抑制や沿岸を含んだ湿地保全によるGHG排出削減等に係る調査・計画・事象実施支援・人材育成に係るサービスの展開を通じて、地球に残された貴重な森林や生態系をその質を損なうことなく次世代に引き継げるように取り組んでいます。
わが国の街路樹は、CO2削減や景観保全等地球環境保全の側面から見た街路樹の位置付けはますます重要なものとなっており、道路管理にはコスト・安全・環境のそれぞれのバランスを考えた維持管理計画がより一層求められています。
当社は、グリーンインフラ整備の観点から、これらの街路樹の維持管理計画の作成を行う他、雨水浸透型植樹帯の提案・モニタリング等を行い、社会資本の維持管理に貢献しています。
私達は日々の生活の中で、ごみを出しますが、これは地方公共団体が収集・処分しています。また、東日本大震災や気候変動に伴う災害発生に伴い、災害廃棄物の処理計画も地方公共団体が担っています。当社は、これらの地方公共団体の廃棄物処理計画、施設の立地に係る適地選定等を技術支援しています。近年では海洋ごみの実態把握調査等を実施し、海洋ごみの基礎情報を整理、対策等を定めた「海岸漂着物対策推進地域計画」策定支援も実施しています。また、海外では廃棄物管理が脆弱な途上国の中央政府・地方自治体の廃棄物管理計画(M/P)策定や、収集や最終処分の実施能力向上、機材調達・施設設計(最終処分場、中間処理施設(焼却発電施設(Waste to Energy)、リサイクル施設等)、収集車両等)に係るF/S、設計等を行っている他、多様化する課題への対策(循環経済・拡大生産者責任に係る制度策定支援、海洋プラスチック対策、災害・戦災時のがれき処理等)や脱炭素化に向けた廃棄物発電・資源循環に係る事業化支援を行っています。
2015年国連サミットでSDGsが採択されて以来、世界的なSDGsに対する意識の高まりに伴い、特に企業の環境、社会・人権、ガバナンスへの取り組みが、投資機関の意思決定プロセスに反映されるようになりました。当社は、2022年7月にサステナビリティデザイン室を創設し、中小企業のSDGsへの取り組みを評価するツール“KIBOH2030”を用いたサステナビリティコンサルティングサービスを展開しています。また、地方公共団体のSDGsへの取り組み評価ツールとして“TSUMUGI@”を開発し、地方公共団体におけるSDGsへの取り組みの可視化を行ってきました。また海外においても、持続可能な企業活動支援の一環として、民間企業進出における人権デューデリジェンスに係るサービスや脱炭素化支援などのサービスも提供しています。このように当社では、これまでに培った自然および社会環境分野に関わる専門性を活かした、サステナビリティコンサルティングサービスを提供しています。
SDGs診断ツールKIBOH2030/TSUMUGI@のサービスサイトはこちら
主な事業実績
国名 | 日本 |
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発注者 | 中日本高速道路株式会社 東京支社 |
プロジェクト名 | 新東名高速道路 秦野~山北間自然環境調査検討業務 |
実施期間 | 2011-2021 |
プロジェクト内容 |
2022年に開通した新東名高速道路(秦野~山北間)において、複数年にわたり調査実施~保全対策検討~モニタリング調査を実施したプロジェクトです。 日本工営は、事業実施に伴う一連の環境検討業務に携わり、工事実施前の自然環境調査、重要な種等に対する保全対策(移植・移設、道路照明検討等)の検討、工事中~供用後のモニタリング調査等を提案、実施し、その結果を有識者からなる自然環境検討会に報告しながらプロジェクトを進めました。 2011年より一連の自然環境調査・保全対策検討業務に携わることで、環境面から発注者の伴走支援を続け、生物多様性に配慮した道路事業の推進に貢献しました。 |
日本工営の業務 | 環境保全に配慮したインフラ整備の提案、支援 |
国名 | ベトナム |
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発注者 | 国際協力機構(JICA) |
プロジェクト名 | ハロン湾環境保全プロジェクト |
実施期間 | 1998-1999, 2010-2013 |
プロジェクト内容 |
クアンニン省ハロン湾は、1994年にユネスコから自然遺産として世界遺産の指定を受けた世界有数の景勝地です。しかしながらハロン湾周辺地域では、石炭工業やセメント工業などが盛んであることに加え、下水道などの都市衛生インフラの不足から環境が悪化していました。 日本工営は、1999年に「ハロン湾環境管理計画」の策定に協力し、環境管理を強化するのに必要な組織体制やインフラ整備について提言を行いました。その後、この計画に基づいて環境管理が行われていましたが、依然として、関係機関の能力や技術力に課題が残っていたため、2010年より技術協力プロジェクトを実施しました。 技術協力プロジェクトを通じて、環境管理を担う地方行政機関の環境モニタリングや分析能力、汚染源調査や改善指導能力、土地利用管理能力、環境教育や啓蒙の質の向上が図られました。 |
日本工営の業務 | 調査・環境保全能力向上や環境教育活動に係る技術指導 |
国名 | 東ティモール |
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発注者 | 国際協力機構 |
プロジェクト名 | 東ティモール国持続可能な天然資源管理能力向上プロジェクト フェーズ1およびフェーズ2 |
実施期間 | 2010-2021 |
プロジェクト内容 |
東ティモールでは1975年以降、内戦、焼き畑、違法伐採、農地転換などで急速に森林減少・荒廃が進み、2003年までに約xx万haの閉鎖林が消失しました。急速な森林減少は、山あいの地形条件と相俟って洪水、斜面崩壊、土地荒廃を起因し、地域の経済活動や農業生産に大きな悪影響を与え、上流のみならず下流の地域住民の脆弱性を高める要因となり、特に重要流域での森林保全が急務な課題となっています。 |
日本工営の業務 | 住民主導型森林保全モデル(CBNRMメカニズム)の開発・試行・実施 同モデル実施に係る手順書作成、能力強化、展開計画の作成・制度化 同モデルを用いた森林保全に係るドナー協調支援 GCF事業の形成 |
国名 | モザンビーク |
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発注者 | 国際協力機構(JICA) |
プロジェクト名 | マプト大都市圏統合的廃棄物管理能力向上プロジェクト |
実施期間 | 2019-2023 |
プロジェクト内容 |
モザンビーク共和国の首都マプト市では、JICAの支援を受けて2018年に「都市固形廃棄物管理マスタープラン」(M/P)が策定されました。
本プロジェクトを通じて技術移転が図られたマプト市環境・廃棄物管理局の職員により、マプト市における統合的廃棄物管理の実施・改善とモザンビーク他都市への経験共有が継続されています。 |
日本工営の業務 | 廃棄物管理・3R推進に係る政府職員の能力向上のための技術協力 |