流域水管理 農村地域

国内分野においては、農業水利施設の調査・計画・設計から施設の機能診断調査、機能保全計画や更新整備計画の策定まで一貫したサービスを提供しています。農業水利施設の長寿命化とライフサイクルコストの低減を念頭にしたストックマネジメントの取組、頻発する地震及び豪雨に備えるため、ため池や用排水施設の耐震対策及び治水対策を策定しています。近年では、低炭素社会の実現、環境との調和への配慮、国土の保全等農業の有する多面的機能の実現にも貢献しています。加えて、農家や施設管理者とのヒアリングを通して農業水利施設の利活用やICT導入のサポート、管理組織の経営状況を分析・改善などソリューションサービス・マネジメントを実施するなど、幅広く農業・農村の維持・発展に寄与しています。

海外分野においては、多くの開発途上国が抱える貧困・飢餓などの諸問題を解決するため、農業・農村インフラ整備(ハード)と営農・流通・組織強化(ソフト)両方のアプローチを通じて、農業生産から流通までのフードバリューチェーン全般をカバーする農村地域開発全般に関わる総合的なコンサルティングサービスを提供しています。また、開発途上国における民間企業のアグリビジネス推進支援に関わるコンサルティングサービスも行っています。これらを通じて、SDGsの「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」の達成に貢献しています。

主な技術サービス

農業農村整備事業の実施に当たっては、環境との調和への配慮、国土の保全等の多面的機能の定量化、地球温暖化対策が求められています。私たちは、農業農村が有する多面的機能について、旅行費用法による水辺環境価値の算定、水田の有する気候緩和機能の定量的な評価を実施しています。また、地球温暖化対策の一環として、ダム、頭首工、機場、農道等を対象にLCA手法を用いて温室効果ガスの排出量の算定、削減対策の検討を行っています。さらに、小規模水力発電の可能性調査やそれらの実現性検討も実施しています。

基幹的農業水利施設(約4万5千km)の適切な維持保全と次世代への継承のため、施設の長寿命化を図り、既存ストックの有効利用を実現することが課題となっています。私たちは、これらの農業水利施設を適正に管理・更新するための機能診断・評価を行い、機能保全計画(予防保全計画)の作成、更新の計画・設計等、ストックマネジメントを実施しています。

2011年の東日本大震災や2018年の西日本豪雨でため池が決壊し、下流地域に甚大な被害を及ぼしました。全国に約15万4千箇所存在するとされるため池は、その多くが近代技術の導入される前の江戸時代以前に作られており、近年頻発するゲリラ豪雨や地震などの災害によって堤体の決壊が懸念されています。ため池関連業務では、機能診断調査による堤体法面や取水施設での変状の確認、解析ソフトを用いた堤体の耐震診断を行っています。”現地”と”机上”、両方からの検討により、現存するため池の安全性を検証し、安全性を満たさない場合には、対策に向けた耐震設計を行っています。

水路をはじめ、農業水利施設は美しい里山風景の一部であり、文化の一部です。これまでは施設管理者が維持管理の役割を担っていました。里山の価値が高まる今、農業水利施設の気づかれなかった価値を見出し、みんなで守っていくことが求められています。「みんなで守る」という、これまでにない新たなインフラとの付き合い方を考案し、地域活性化の一助となる事業を創出することも、私たちの仕事です。

開発途上国の貧困削減、農村住民の自立と生計向上、食糧不足の解消といった社会的課題の解決に貢献するため、農業・農村インフラ整備(ハード)と営農・流通・組織強化(ソフト)両方のアプローチを通じて、フードバリューチェーン全般をカバーする総合的なコンサルティングサービスを提供しています。主な技術分野は、農村振興計画づくり、灌漑排水・農村インフラの整備・運用・維持管理、営農・栽培技術改善、収穫後処理・農産物バリューチェーン改善、農民組織強化、農業普及手法の改善、環境社会・ジェンダー配慮、農村レジリエンス強化・気候変動適応、地方行政・政府職員能力・体制強化、栄養改善、農村金融、民間アグリビジネス支援等で、それらを通じて、農家の農業生産・生計の向上と安定化、農村の持続的な発展を目指しています。

開発途上国でのアグリビジネスを計画・実施している民間企業に対するコンサルティングサービスを提供しています。現地の市場ニーズ・制度に係る調査、技術的な知見を踏まえた実現可能性調査、事業計画策定支援、開発途上国政府との協議・調整支援、現地での実証調査など、これまでの日本工営がこれまでに培ってきたネットワークも活用し、クライアントの視点に立ったコンサルティングサービスを行っています。

主な事業実績

都道府県 -
発注者 関東農政局
プロジェクト名 農業水利施設管理AI活用推進事業 機能保全AI導入計画検討業務
実施期間 2021-2022
プロジェクト内容

農業用パイプラインは、漏水といった突発事故が発生する頻度、発生した時の影響が大きいため、事故リスクが高い状況です。しかし、地下埋設物のため、現地調査の制約が多く、高い精度で機能診断調査を実施すること、適切な機能保全計画を立案することが困難という問題があります。そこで、農林水産省では、AI技術を活用して、事故リスクを算出することが可能か検討しています。
本業務では、パイプライン、コンクリート製開水路、点的土木施設において、機能保全へのAI導入に向けた課題を抽出、検討し、中長期計画を検討しました。また、AI導入への活用にあたって、現行の「農業農村整備におけるUAV活用の手引き」「UAVを活用した機能診断調査マニュアル(案)」の更新を行いました。
高リスクの箇所を優先的に補修し、機能保全計画に盛り込めるようにすれば、リスクおよび維持管理コストを低減できる効果が見込めます。さらに、データ駆動型マネジメントやEBPM(Evidence Based Policy Making、証拠に基づく政策立案)を推進することに繋がります。

日本工営の役割 AI技術の活用、農業用パイプライン事故リスクの算出、データ駆動型マネジメントやEBPMの推進
漏水した農業用パイプラインです。営農、周辺住宅への影響を最小限にするため、できるだけ早く復旧する必要があります。
パイプライン機能診断の様子です。中は暗く、進入路も限られています。また、調査期間は断水するため、営農への影響を最小限にするため、短時間で調査を実施しなければならず、制約が多いです。
都道府県 長野県
発注者 長野県
プロジェクト名 令和2年度県営農村地域防災減災事業長野県5地区ため池洪水調節機能診断その5業務
実施期間 2020-2021
プロジェクト内容

本業務は、長野県の防災重点ため池654箇所のうち、洪水吐の改修が完了していない信濃川水系86箇所にてため池洪水調節機能を診断しました。

主要な作業内容として、(1)現地調査:流域、ため池諸元を確認、(2)設計洪水流量の算定、(3)洪水調節機能の診断、(4)対策方針の検討:ソフト対策とハード対策の方針を検討、(5)概要図の作成、(6)低水位管理の有効性検討:低水位管理によって想定した洪水に対する効果を検討、(7)貯水位と貯留量のモデル作成:低水位管理による空き容量算定のために、ため池内の測量が行われていた26箇所のため池について谷池、皿池に分類してH―V曲線を作成しました。

本成果は、今後ため池改修を実施する際の優先順位を決定する資料の一つとなりました。

本来は利水を目的として造られたため池を、流域治水に活用する取り組みも行われるようになりました。ため池の保全は、それ自体への災害を防止するだけでなく、下流の水害リスクを低減する役割も担っています。

日本工営の役割 設計洪水流量の算定、洪水調節機能の診断、ソフト対策とハード対策の方針を検討、低水位管理の有効性検討、貯水位と貯留量のモデル作成
〈平出泉:全景〉平出遺跡の一角に位置し、縄文時代から平安時代にできたとされるため池です。このような古くから存在するため池が全国に多く存在しています。
〈聖湖:洪水吐〉200年に一度規模の大雨が降っても、池に溜まった大量の水が堤防を越水しないよう、安全な流下が可能な設計を行う必要があります。
都道府県 山形県
発注者 農林水産省 東北農政局
プロジェクト名 ICTモデル事業赤川二期地区 赤川二期地区ICT水管理施設効果検証業務
実施期間 2021-2022
プロジェクト内容

農業分野の労働生産性を向上させることを目的とした農業農村インフラへのICT(Information and Communication Technology)の導入に関わる取り組みを提案しています。ICTの導入が急速に進み始めた背景には、技術の発展だけでなく、政策により農業の経営規模の拡大が進んだことが挙げられます。規模が拡大するほど、従来のような手動の給水管理のままでは、作業コストが許容不能なほど増加してしまいます。そのため、より効率的な水管理を実現するために、ICT自動給水栓やICTポンプ制御システム等の活用による対策が推進されています。当社ではICTを導入した整備構想、実施設計を行っています。また、農家や施設管理者へのヒアリング、雨量データ、流量データ、電気代等のデータからICT導入による効果の検証を行い、農業の効率化、省力化を目指した取り組みを行っています。

本業務は、ICTを活用した水管理施設整備モデル事業の効果算定を行ったものです。検討では、ポンプ設備や給水栓の操作にかかる水管理労力の軽減、水管理作業環境の改善、揚水機場の電気料金縮減等、事業実施による発現効果を貨幣価値換算し、定量的に評価しました。また、ほ場単位での給水時間やICT自動給水栓の操作状況を整理し、事業実施による配水の公平性や配水柔軟性の改善効果を定性的に評価しました。最終的には本事業の費用対効果(B/C)を試算し、評価するとともに本事業で明らかとなったICT設備及び運用にかかる課題、設備利用者の意見等をとりまとめました。ICT自動給水栓等の導入を通じて農家さんの負担が減り、節水や柔軟な水管理に貢献しています。

日本工営の役割 ICT水管理の評価、スマート農業の広報
ほ場に設置されたICT自動給水栓です。スマートフォンやタブレット等の携帯端末からほ場水位を確認できます。
設定した水位より下がると自動給水されます。自動給水栓の導入により、農家さんの負担が減り、節水や柔軟な水管理に貢献しています。
都道府県 埼玉県
発注者 水資源機構 利根導水総合事業所
プロジェクト名 埼玉合口二期地区水利諸元調査計画業務ほか
実施期間 2019~2022
プロジェクト内容

本業務は、埼玉合口二期地区(受益面積 水田 約11,000ha)における水利権更新のため、営農調査、土地利用状況調査、配水管理用水調査、減水深調査、末端損失率調査、水収支計算を行い、用水量を算定しました。

営農基礎調査では、用水計画に必要な営農計画策定のため、現状、今後の方向性及び営農計画について把握・整理しました。土地利用状況調査では、現行河川協議の現行受益図から転用農地を除外した受益図を作成しました。減水深調査は、新規ほ場整備区を対象に現地踏査にて用排水施設や現場条件を確認した上で実施した。配水管理用水量調査は、転用の多い地域を抽出し、関連する幹線水路及び一次支線から選定、実施しました。水収支計算プログラムの作成では、現行プログラムの仕組みと課題を整理し課題対応策を含めて作成方針を定めました。また、プログラム作成後に、現行河川協議の数値と新規プログラム計算結果の比較で妥当性を検証し、操作マニュアルを作成しました。

操作マニュアルを作成したことで、施設管理者でも水収支計算を行えるようになりました。今後は、調査結果を踏まえ、今後の水利用に沿った水利権更新に向けて施設管理者と河川管理者の協議に入ります。

日本工営の業務 営農調査、土地利用状況調査、配水管理用水調査、減水深調査、末端損失率調査、水収支計算
新規ほ場整備地区は用排水施設の整備により、減水深が変化している可能性があることから、調査を実施しました。水田に設置した水位データから減水深を算定し、必要な用水量を算定しました。
受益面積の減少により、支線水路への配水に必要な水位を確保するための水位が必要となる地区を選定し、調査を実施しました。
都道府県 群馬県
発注者 水資源機構 群馬用水管理所
プロジェクト名 群馬用水施設事業計画策定業務
実施期間 2021-2022
プロジェクト内容

日本の農業を取り巻く環境は変化してきています。農家(個人経営体)の数は年々減少、一方で規模の大きい農家(法人経営体)の数は増加傾向にあります。また、農業水利施設の多くは老朽化し更新が必要な時期に到達しています。加えて、近年頻発する自然災害に対する施設や社会の強靭化も必要になっています。当社では、こうした背景を踏まえて地域農業と社会の維持・発展を目指し、水路を含めたて農業水利施設の更新や機能増強に向けて、事業計画(案)の策定を行っています。

本業務では、群馬用水次期事業の事業計画(案)を作成しました。工事計画では、トンネル5施設(2R=1600~3800)、矩形暗渠(B2300xH2300)1施設、円形暗渠(PC管φ900)1施設の劣化対策と、開水路2施設(Q=4.494㎥/s、4.696㎥/s)の二連化改築、赤榛分水工の拡幅改築の計画を策定しました。また、算出した概算工事費をもとに経済効果の算定を行いました。受益面積調査では、事業の受益面積6,154haを設定しました。営農計画調査では、営農検討会での意見を反映させた営農計画(案)を策定しました。そのほか、用排水計画調査、環境配慮の基本方針(案)の作成を行い、事業計画書(案)に取りまとめました。

事業が実施されれば、施設の機能が向上し用水を安定供給することができます。

日本工営の役割 工事計画、営農計画、環境配慮計画、用水計画、事業計画(案)の作成
工事計画では、顧客の要望を聞き取りながら、トンネル、暗渠、開水路、分水工の工事計画を立案し、事業費を算出しました。
営農計画調査では、県、市町の振興計画や統計データに基づき、代表作物の選定や代表作物毎の計画作付面積を設定しました。
都道府県 -
発注者 農林水産省 東海農政局
プロジェクト名 農業農村整備BIM/CIM活用ガイドライン(頭首工編)検討業務
実施期間 2021-2023
プロジェクト内容

本業務では、国土交通省発注の公共事業においてBIM/CIMを原則適用が目指されていることを踏まえ、農林水産省も同様にBIM/CIM活用を進めるためのガイドライン(頭首工編)を作成しました。

作成に当たっては、国土交通省で策定されたBIM/CIM活用ガイドライン(案)の河川編、道路編、機械設備編などの情報を整理し、農業農村整備事業で取り扱う頭首工についての記載内容の検討や検討課題の整理等を行いました。また、愛知県犬山市と岐阜県各務原市にまたがる犬山頭首工のBIM/CIMモデルを作成し、属性情報の入力、WEBでのモデル共有を試行しました。

今後、ガイドラインに基づき3次元モデルを計画・調査・設計・施工・維持管理の各段階で取り扱うことで設計ミスの防止や関係機関との情報共有など建設プロセス全体の効率化が図られます。

日本工営の役割 BIM/CIM活用ガイドラインの検討、BIM/CIMモデルの作成
犬山頭首工を下流から撮影した写真です。ガイドライン策定にあたり、既存構造物の3次元データを取得する方法も試行しました。
作成したBIM/CIMモデルです。2次元CAD図面から作成したものですが、3次元化することにより2次元図面の不整合箇所などが明らかになりました。
都道府県 宮城県
発注者 東北農政局大崎農業水利事務所
プロジェクト名 鳴瀬川(一期)農業水利事業桑折江頭首工補足設計業務
実施期間 1998-1999
プロジェクト内容

桑折江頭首工は、一級河川鳴瀬川から最大4.6㎥/s取水し、1,303haの農地に用水を供給する基幹取水施設です。本業務の主要な内容は、河川維持流量2.5㎥/sを当時最新のバーチカルスロット式魚道(右岸)、アイスハーバー式魚道(左岸)を採用し設計したものです。業務では、土質定数の見直し伴う土堰堤、自立式矢板等仮締切工の比較検討、管理橋上部工の材質変更(普通鋼材から耐候性鋼材)の設計を行いました。

日本工営の役割 魚道、土堰堤、仮設、管理橋の設計
上空から撮影した桑折江頭首工です。両岸に設計した魚道が設置されています。
アイスハーバー式の魚道です。魚道の設置により、周辺環境を保全するとともに、魚が頭首工に阻まれることなく遡上・降下することができます。
都道府県 新潟県
発注者 農林水産省 北陸農政局
プロジェクト名 国営施設応急対策事業新津郷地区大秋排水機場耐震基本設計業務
実施期間 2021-2022
プロジェクト内容

本業務では、大秋排水機場(チューブラポンプφ2100x7台、69㎥/s)の耐震基本設計を行いました。対象施設は、杭基礎、除塵橋部、吸水部、ポンプ室、吐出暗渠、調圧水槽、樋門・樋管、自然排水樋門、変電設備架台、管理棟でした。過年度耐震照査結果より、補強・対策の必要性を把握した上で、構造物各部位別に耐震補強対策工法を再検討し、施工性・経済性を考慮した対策工法を決定しました。また、全面更新案を概略検討し、経済性や施工性について耐震補強案と比較を行い、採用案を検討しました。採用された工法について、施工計画、対策工図及び仮設計画図の作成、数量計算、概算工事費を作成しました。

耐震性能照査を実施することで、大地震に耐えられる施設にするために必要な対策工を計画、設計することに繋がります。

日本工営の役割 耐震照査、耐震設計、防災・減災への貢献
耐震性能照査の対象となった排水機場の除塵橋と吸水槽です。照査の結果、NG値が確認さたため、耐震補強が必要と判断されました。
排水機場のポンプ設備です。関連業務で機能診断を実施し、健全度評価を行い、機能保全対策を立案しました。
都道府県 福島県
発注者 社内研究開発
プロジェクト名 土地改良施設の維持管理・運営手法におけるビジネスモデルの検討
実施期間 2018-2022
プロジェクト内容

日本の農業は農業従事者や農業協同組合だけではなく、農業水利施設の保全・整備を任されている施設管理者が存在し、限られた補助金や賦課金を施設管理費として、農業基盤を支えています。しかし、全国に整備された農業水利施設は、供用開始から年月が経過しており、それらの維持管理コストは年々増加傾向にあります。

当社では、限られたリソース(ヒト、お金)の中で、今後も良好な維持管理を行っていくために、「施設管理にかかる経営分析」と「施設の他目的使用による新たな収益源の検討」という2つの観点から、新しい施設管理のあり方の検討や提案、実証実験を行っています。

農業水利施設の新たな運営管理モデルの確立を目的として、財務分析手法の開発、農業水利施設の本来の水利目的以外の活用方法(他目的使用)の検討を行いました。また、法的課題の整理や収益性の検討などを含めた実証調査を行いました。

日本工営の役割 財務分析手法の開発、農業水利施設の本来の水利目的以外の活用方法(他目的使用)の検討
これまで人力で実施していた壁面や背面の変状を確認する調査を、フロート式ロボットにより代替できるか、実証試験を行いました。
水路上空を物流ドローンの空路として活用できるか、実証試験を行いました。
国名 インド
発注者 オディシャ州政府
プロジェクト名 レンガリ灌漑事業(フェーズ1、フェーズ2)
実施期間 1998-2012(フェーズ1)、2016-2023(フェーズ2)
プロジェクト内容

インド西部のオディシャ州にあるレンガリ灌漑地区における灌漑システムの建設と水利組合の設立・強化および受益農家の栽培技術の改善等の生計向上活動により、地区内の農業生産性と農家の生活水準を向上させるためのプロジェクトです。

フェーズ1では、灌漑面積29,796haを対象とし、左岸幹線水路(総延長:41km、設計流量:最上流部146㎥/s)、幹線水路主要構造物(三連ボックスカルバート:800m、水路橋:400m、国道橋:120m、野生のゾウ専用水路横断道等)、支線水路(総延長:618km、付帯構造物:2,636ヶ所)を建設しました。フェーズ2では、灌漑面積39,416haを対象とし、左岸幹線水路(総延長:23km)と4本の支線水路および水路主要構造物を建設しています。

ソフト・コンポーネントとして、受益農家に対する栽培技術研修の実施、農業普及の改善、水利組合の設立・強化、水・土地管理公社の能力強化を行っています。フェーズ1では、環境社会配慮として、野生のゾウ専用の水路横断構造物・水飲み場・水浴び用の池の設置を行い、生息に適した植林も行いました。また、灌漑地域の拡大に起因して発生する可能性があるマラリアの対策として、12ヶ所の保健診療所の施設修繕と分析機器の設置、マラリアに関する地域住民への啓蒙活動や保健所員への技術研修も行いました。

日本工営の業務 事業全体の監理、コンサルティングサービス(灌漑計画・設計、工事業者調達業務、施工監理、灌漑施設維持管理、参加型灌漑管理、環境・社会配慮、MIS/GISを使用した事業モニタリング導入)、等
フェーズ2で建設された幹線水路・水位調整堰・支線水路、そして背後に広がる通水後の水田。水田稲作の生産性向上と地域農民の生計向上に貢献しています。
環境社会配慮の一環で、野生のゾウの生息地が分断されないよう、移動のための水路横断構造物(エレファント・コリドー)と生息に適した樹種の植林を行いました。
国名 スリランカ
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 北中部乾燥地域における連珠型ため池灌漑開発計画プロジェクト
実施期間 2016-2018
プロジェクト内容

降雨の8割が雨期に集中するスリランカ北中部の乾燥地域では、水資源の有効利用を図るため、古くから連珠型ため池システムが構築されてきました。連珠型ため池システムに貯留された水資源は、主に灌漑用水として利用されてきましたが、水量は不十分で、生産性の高い農業が実現できずにいました。そのため、スリランカ政府は、スリランカ最大の河川であるマハベリ川の河川水を同地区の連珠型ため池システムに転流し、農業生産性の向上をはかるNorth Central Provincial Canal(NCPC)事業に着手しました。本プロジェクトはNCPC事業完了後、128の連珠型ため池システム(約31,000ha、約33,000農家)での水利用を最適化し、農業生産性を高めるための計画づくりが目的でした。計画には、気候変動に起因するため池の決壊や洪水被害を軽減するための防災計画も含まれました。

日本工営の業務 その計画づくりのため、①灌漑施設整備と灌漑用水の効率的利用(灌漑水路・ため池間の連結水路の建設、洪水吐の流下能力改善、ため池堤体改修、ため池水位監視システム運用)、②農民参加型防災(ため池損傷リスクに係る農民組織の意識醸成、農民参加型ため池改修・補強工事)、③作物多様化(水利用効率化のための高付加価値野菜・伝統米・新品種水稲・飼料作物の試験栽培と技術普及)、④連珠型ため池システムの共同体意識の醸成(連珠型ため池システム管理組織構築、連珠型ため池システム水管理計画策定)等の実証事業を行い、その有効性と実現可能性を調査しました。
連珠型ため池システムの水管理を容易にするため池間の連結水路を試験的に建設し、その効果と実現可能性を検証しました。
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構と共同でため池水位監視システムを試験的に構築し、先進的なため池管理手法の導入可能性を検討しました。
国名 インド
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 ミゾラム州持続可能な農業・灌漑開発のための能力向上プロジェクト
実施期間 2017-2023
プロジェクト内容

ミゾラム州はインド北東部に位置し、東はミャンマー、西はバングラデシュと国境を接しています。人口は約100万人とインドで2番目に小さな山岳州で、事務所を構える州都アイザウィルは標高1,100mに位置し、傾斜35度以上の土地が州の70%を占め、これまで長く移動焼畑農業が営まれてきました。しかし、近年の人口増加に伴って焼畑農業のサイクルが短くなり、生産性が低下したことから、州政府は新土地利用政策(New Land Use Policy)として、農業の定住化を図りましたが、政策には必要な技術普及が伴っていませんでした。そのため、州政府の要請を受けて持続可能な農業・灌漑開発を促進するためにミゾラム州政府の組織能力を強化することを目的に、本プロジェクトは開始されました。

農民参加型で定着農業を軸とした農業持続化計画を立案し、計画達成のために必要な技術普及の手順を実施機関(灌漑・水資源局、農業局、園芸局、土地資源・土壌・水保全局)とともに作成し、6つのパイロット村落で有効性を検証しています。検証している技術は、灌漑インフラ整備、作物栽培技術普及、土壌流亡対策等であり、この活動を通じて、将来的に州内全体に展開できるよう技術普及の手順と手法を構築しています。同時に、政府職員の能力向上を図り、ミゾラム州政府の持続的な農業・灌漑開発の枠組みの整備も進めています。

日本工営の業務 事業実施方針の立案・事業進捗・成果管理、先方政府職員への技術研修の実施、本邦研修の企画・実施、パイロット村落におけるOJT、先方政府と共同で農業持続化の手順書の作成、新手法制度化に向けた支援等
パイロット村落における持続可能な土地利用計画作り。傾斜度やアクセス性から利用可能な農地を特定し、農民と農業の持続化に向けた対策を協議しています。
パイロット工事を通じた灌漑施設にかかる技術検証。調査、設計、入札、施工監理、維持管理指導方法を標準化し、工事品質の向上と施設の長寿命化を図っています。
国名 インド
発注者 JICA(準備調査)/ジャルカンド州政府(事業)
プロジェクト名

ジャルカンド州点滴灌漑導入による園芸栽培促進事業準備調査

ジャルカンド州点滴灌漑導入による園芸強化事業

実施期間 2013-2014(準備調査)/2016-2022(事業)
プロジェクト内容

ジャルカンド州はインド東部に位置し、貧困世帯の割合がインドで2番目に高い州です。この調査は、ジャルカンド州政府から日本政府に要請された園芸作物栽培促進事業の実現可能性を調査することを主な目的としていました。女性農家により構成される自助グループ(Self Help Group:SHG)を介して点滴灌漑施設を普及することとなっており、女性農家のニーズを計画に的確に反映させる必要がありました。また消耗品である点滴灌漑施設を持続的に更新するための方法を検討する必要がありました。

調査の結果、換金作物振興による農家の生計向上を効率的に実現するため、州内外のトレーダーと農家の取引が行われる複数の集積市場(Assembling Market)にアクセスできる地域から事業対象地域を選ぶ計画にしました。また、女性農民のニーズをもとに、家事の合間でも作業ができるよう、各世帯に設置できる簡易堆肥施設・小型育苗施設・点滴灌漑施設を一つのパッケージとして普及する計画としました。それにより、女性農民によって、土づくりと育苗、点滴灌漑による野菜栽培、集積市場への出荷までの生産プロセス全体を負担なくカバーできる計画にしました(市場を起点とする生産プロセス全体の計画づくり)。

その後、JICAによる有償資金協力として事業が開始され、当社の現地法人Nippon Koei India Pvt. Ltd.(NK India)が、グループ一体型案件として事業実施に関わっています。

日本工営の業務

準備調査:ジャルカンド州の農作物市場・農業生産概況調査、女性農家の営農状況調査、農業用井戸の水質調査、点滴灌漑農業の現状調査、SHGの運営状況調査、ジャルカンド州政府の事業実施体制の調査、事業の実現可能性分析と調査結果の計画への反映、等

事業(NK India):事業運営全般、対象地域とSHGの選定、SHGとの合意形成、堆肥・育苗・点滴灌漑施設の調達と配布、野菜栽培の技術指導、事業モニタリング、等

点滴灌漑施設導入のためのSHGへの説明会。本事業は女性農家のエンパワーメントを主な目的とし、SHGを通じて営農や組織運営など幅広い支援を行っています。
点滴灌漑農業を始めた農家。キサンカードという農作業や収支を記録するカードを農家に導入し、普及員がそれをもとに効果的な技術指導ができるようにしています。
国名 インド
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進プロジェクト(フェーズ1、フェーズ2)
実施期間 2011-2015(フェーズ1)/フェーズ2(2017-2022)
プロジェクト内容

インド北部ヒマラヤ山麓のヒマ―チャル・プラデシュ州(HP州)では、労働人口の約7割を農業従事者が占め、主に自家消費用の穀物が栽培されていました。農家の生計向上を図るため、多様な地形・気候条件や一大消費地のデリーに近いというHP州の特徴・優位性を活かして、商品価値の高い野菜栽培を中心とした作物の多様化を推進することを目的として本プロジェクトが開始されました。

フェーズ1では作物多様化を推進するための仕組みを構築することを目的として、HP州の農業局の能力向上、農業普及員向けの研修システムの開発、普及員の技術向上、パイロット地区における作物多様化推進モデルの開発を実施しました。フェーズ2では、HP州内の農家のさらなる生計向上のために、農業普及員に対する研修実施や作物多様化推進のための技術パッケージの取りまとめ、農産品マーケティング振興に係る効果的な活動の特定、対象地域における作物多様化推進のための持続的な計画の策定、食の多様化および栄養改善に関する活動、灌漑施設の維持管理のための活動を実施しました。

日本工営の業務 農業普及員に対する研修の実施および農業普及員から農家に対する研修のモニタリング、作物多様化推進のための技術の取りまとめ(プラグトレイ、ウォークイントンネル、ポリハウス等)、マルチシートと点滴灌漑を利用したキュウリおよびカリフラワーの促成栽培普及、作物多様化推進のための営農計画策定支援、作物多様化および栄養改善のためのビーツパウダーの生産振興、チェックリストを用いた灌漑施設の維持管理の指導、等
マルチシートと点滴灌漑を使ったキュウリの促成栽培。農家が行う出荷時期を早めることでの他地域との差別化と所得向上を支援しました。
普及員による点滴灌漑施設のフィルターの維持管理方法の技術移転。適切な灌漑を行うには日常的なメンテナンスが必要です。
国名 インド
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 北東州農業セクターに関する情報収集・確認調査
実施期間 2014-2015
プロジェクト内容

インド北東州は「チキンズ・ネック」とも呼ばれる狭い山岳地を通じて、インド本土と結ばれています。中国、ブータン、ミャンマー、バングラデシュに囲まれていますが、国境までの道路網が未整備で、安全保障上の理由から他国との物流も限定的で、隔絶された地域となっています。また、地形や自然条件に合わせた焼畑耕作、棚田、アグロフォレストリー、少量多品目の資源循環型複合農業システム等、多様で地域ごとに伝統的・特徴的な農業が営まれていています。これまで部族ごとの反政府活動が活発で、地域経済の発展の阻害要因となっていました。近年、政府との和平交渉が進み、治安も安定し、日・印政府間で北東州の発展に向けた支援の検討が進められてきました。本調査は、農業セクターにおける今後のJICAの協力方針の検討に必要な基礎情報の収集を行うために実施されました。

日本工営の業務 調査では、メガラヤ州、トリプラ州、ナガランド州を対象に、文献調査、関係者へのヒアリング、現地踏査等を通じて、農業政策・行政および農業の特徴・現状・課題の把握・整理を行いました。また、対象州における農家調査を実施して世帯レベルの営農における現状・課題を定量的に分析しました。それを踏まえて、JICAによる北東州農業セクターへの協力における方向性、優先分野、協力案等についての提言をまとめました。生産から流通までの垂直統合と農業セクターの多様なアプローチから成る水平統合の概念に基づいて協力案を検討し、在来技術を活かした地形適応型多面的農業システムの整備についての提案も行いました。
ハンノキを組み合わせた焼畑(Alder Based Cultivation)。石垣を使った段々畑でハンノキの枝葉を利用した土壌改良を組み合わせたナガランド州の伝統的な農法です。
ナガランド州Ao族の農民へのヒアリング。伝統的な部族コミュニティによる自治が行われている地域も多く、それぞれの特有の文化、言語、農業形態を持っています。
国名 カンボジア
発注者 カンボジア国水資源気象省
プロジェクト名 トンレサップ西部流域灌漑施設改修事業
実施期間 2007-2012(調査期間)、2013-2021(設計・施工期間)
プロジェクト内容

カンボジアのトンレサップ湖周辺地域は、同国の主要な稲作地ですが、旧共産体制下で作られた灌漑施設の多くは十分機能しておらず、生産性が低い状態に置かれています。本事業は、トンレサップ湖西部に位置する農村部貧困地域の3州6地区(13,393ha)の灌漑排水施設の整備、農民水利組合の設立・強化、営農指導により農業生産の増加を図り、同地区農民の生計向上を目指すものです。

灌漑排水施設(頭首工4ヵ所、潅漑用排水路約620km、水路付帯施設約1,100個)の整備は工期内2020年12月に完了し、灌漑用水は計画通り末端まで行き渡っています。事業実施後、コメのha当り単位収量は約2トン増加した地区もあり、農家の所得向上と貧困軽減に寄与しています。本事業は当社がマスタープランから一貫して実施した案件であり、カンボジア初の円借款灌漑事業として高い注目を集めました。

日本工営の業務 事業実施全体管理、詳細設計、工事業者調達支援、施工監理、O&Mマニュアルの作成、政府職員・水利組合に対する水管理強化支援、農民水利組合及び農民水利グループの設立支援・組織強化並びに営農指導、業務を通じた政府職員への技術移転、等
リアム・コン頭首工(堰長20m、全門可動堰(洪水吐ゲート1門、土砂吐ゲート1門)、最大取水量2.8㎥/s)
農民水利組合への営農指導を実施しました。事業により、水稲の単位収量は増加しました。
国名 ラオス
発注者 アジア開発銀行(ADB)
プロジェクト名 北部農村インフラ整備事業
実施期間 2011-2023
プロジェクト内容

日本工営は1997年からラオス北部における農村インフラの整備、さらには整備されたインフラを利用した農業開発プロジェクトに係るコンサルティングサービスに関わってきました。本プロジェクトは、北部4県(ポンサリ県、ボケオ県、ルアンナムタ県、ウドムサイ県)において、参加型インフラ整備(灌漑・道路)、営農、加工・流通の支援を通じた農村地域の生計向上を目指したプロジェクトです。主に以下の4つの事業コンポーネントからなります。

コンポーネント-A:農村インフラ開発(小規模灌漑施設整備、施工監理)、コンポーネント-B:ソフト分野支援(インフラ運営維持管理、土地利用計画・管理、農業生産・加工・流通、ジェンダー、土地登記、周辺環境への影響評価)、コンポーネント-C:組織強化(ラオス国農林省計画局内の事業モニタリング体制構築、能力強化トレーニング実施)、コンポーネント-D:事業実施監理(事業進捗モニタリング、ADB Safeguard Policy Statementに基づく環境社会配慮調査の実施とモニタリング)

プロジェクトでは、河川から農業用水を取るための頭首工や灌漑用水路等の小規模灌漑施設の整備を行いました。また、対象地域における農家の土地登記の支援を行っており、これにより土地の資産が明確になり、プロジェクトによって資産価値が向上し、また担保として認められることで、農家が銀行融資を利用しやすくなります。また、農家や市場のニーズに合わせた付加価値の高い農業の振興を図りました。プロジェクトの成果はラオス政府やアジア開発銀行からも高く評価され、ラオス国内のベスト・プロジェクト表彰も受賞しています。

日本工営の業務 サブ・プロジェクトのフィージビリティ・スタディ(事業実現可能性調査)取りまとめ、詳細設計管理、施工監理、施設運営維持管理のためのグループ作り・技術指導、流域管理計画作成支援、農業生産・加工・流通に係る技術指導、土地登記のための技術指導・実施管理、プロジェクト全体モニタリング支援、等
受益面積・受益者数の拡大および効率的な灌漑水利用のための支線用水路の建設・整備を行っています。
灌漑地区内の土地利用計画を決めるための政府職員・農家代表者による会議を開催しました。
国名 ベトナム
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 北部地域における安全作物の信頼性向上プロジェクト
実施期間 2016-2021
プロジェクト内容

ベトナムでは、農産物の生産拡大に伴い農薬や化学肥料の使用量が増大する一方、経験と勘に頼った栽培が原因で残留農薬や微生物による汚染などの問題が顕在化しており、農産物の安全確保が課題となっています。また、農産物の流通時の混載など、流通や加工、販売の過程での不十分な管理により、消費者の農産物の安全性に対する信頼性は必ずしも高くなく、生産者と流通業者間の信頼関係の構築が求められています。さらに、安全な農産物の消費拡大には、正しい知識に基づく効果的な啓発活動も重要です。

本プロジェクトの目的は、ベトナム政府に正式承認された「Basic GAP」をベトナム北部2市11省に適用、普及、拡大させることにより、安全な作物(安全野菜)栽培の振興を図り、もってベトナム北部地域(2市11省)の農産物の安全性と信頼性の向上に寄与することです。本プロジェクトでは、この目的達成に向け、①生産活動支援、②マーケティング活動支援、③消費者啓発活動の3つの活動を軸に技術協力を行いました。

日本工営の業務

①生産活動支援:Basic GAP指導、土壌水質検査、農産物のサンプリング検査、内部監査の監督、生産計画の策定支援、共同購入・共同販売体制の構築、集出荷施設の整備、生産活動モニタリング

②マーケティング活動支援:マッチングイベント開催、販売契約支援、目揃え会など購買者のフィードバック機会創出、集出荷活動の実施促進

③消費者啓発活動:学校教育、ポスターコンテスト、安全作物生産者や販売店紹介Webサイト構築、店頭啓発活動

ベースライン調査、市場調査、エンドライン調査、生産管理構築マニュアル・サプライ・チェーン構築マニュアルの作成、等

Basic GAP導入のため政府職員や20の農家グループ向けに栽培記録や収穫後処理に関する技術指導を実施しました。
小中学生を対象に食品安全啓発活動を実施し、リーフレットの配布、ポスターの制作、AEONの協力を得た授賞式や展示会を開催し、子どもを通じた家庭での食品安全意識啓発を促進しました。
国名 インドネシア
発注者 インドネシア国公共事業・国民住宅省水資源総局
プロジェクト名 コメリン灌漑事業I期/II期フェーズ2
実施期間 1990-1996(第I期)/2006-2015(第II期フェーズ2)
プロジェクト内容

インドネシアでは1984年に米の自給が達成されたものの、その後も高い人口増加率と一人あたりの米消費量の増大から、引き続き米生産の基盤強化を図ることが求められていました。コメリン灌漑地区が位置するスマトラ島南部の南スマトラ州とランプン州では当時ジャワから毎年約5万トンのコメ移入を余儀なくされており、新規灌漑開発が求められていました。

日本工営の業務 コメリン灌漑事業は、灌漑施設の建設、圃場整備、施設・水管理能力の強化を通じ、安定的に水を供給することにより、米の増産と農家生計の向上に資することを目的として実施されました。第I期で頭首工、幹線水路が建設され、第II期で2次水路、3次水路の開発と灌漑地域の拡張が実施されました。第II期フェーズ2完了時の総灌漑面積は59,148haとなり、インドネシアで4番目に大きな灌漑地区となっています。
プルジャヤ頭首工(堰長215.5m、全門可動堰(洪水吐ゲート7門、土砂吐ゲート3門)、最大取水量90㎥/s)
灌漑地区内の水田で田植えをする農家。事業により、水稲の単位収量は増加しました。
国名 ケニア
発注者 ケニア国国家灌漑公社
プロジェクト名 ムエア灌漑開発事業
実施期間 2011-2023
プロジェクト内容

首都ナイロビから北東へ100kmほどの地域に広がるムエア灌漑地区では、1990年代に頭首工および水路の新規建設・改修、既存灌漑地区(約6,600ha)の圃場整備等がJICAの無償資金協力事業にて実施されました。現在では、ケニアのコメの約8割が生産されるケニアおよびサブサハラアフリカを代表する灌漑地区の一つです。

無償資金協力事業の後、新規灌漑地区拡張のためのダムおよび灌漑・排水施設の詳細設計が実施され、2011年よりムエア灌漑開発事業(本事業)が始まりました。本事業は、大統領のフラッグシップ事業の一つとされており、ケニア国内でも注目度の高い事業です。詳細設計の見直し、住民移転や施工業者入札を経て2017年からティバダム及び灌漑・排水路の建設工事が実施されており、2023年中に完工となる予定です。

日本工営は無償資金協力事業から約30年にわたり、本地区の灌漑開発に携わってきました。本事業により、ダムの水を利用した二期作が可能となり、灌漑面積は約8,000haから約10,000haに増加、年間の水稲総生産量は約35,000トンから約67,000トンに増加する予定です。また、既存灌漑地区では、更なるコメの生産性向上を目指し、技術協力プロジェクトが実施されていて、灌漑排水インフラの整備と営農者への技術協力の2つの技術を軸にして、ケニアのコメ生産量増大に寄与しています。

日本工営の業務 事業実施全体管理、ダムおよび灌漑・排水施設の詳細設計、工事業者調達支援、施工監理、O&Mマニュアルの作成、政府職員・水利組合に対する水管理強化支援、事業効果のモニタリング・評価、業務を通じた政府職員への技術移転、等
ティバダム(2022年完成、ロックフィルダム、堤体高:40m、堤体長:1.1km、堤体積:120万㎥、貯水容量:11.2百万㎥)
建設中の灌漑水路(コンクリートライニング、計画流量:2.88㎥/s、水路底幅:2.5m、水路高:1.6m、延長:2.4km)
国名 パレスチナ
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 市場志向型農業のための農業普及改善プロジェクト
実施期間 2016-2022
プロジェクト内容

パレスチナ自治区はイスラエルとの紛争の影響で、農産物の価格が低迷し、農業経営が不安定という問題があります。また、パレスチナ人農家は将来の見通しが立たない中、前向きに農業ができないという心理的課題もありました。そこで、紛争地特有の課題とパレスチナ農業の強みの両方を把握したうえで、現地に合った農業普及手法を考案し、パレスチナ政府職員の能力強化を通じて、紛争下の農家の農業所得の向上と安定化を目指しました。

まず紛争地でも前向きに工夫しながら農業を行っている優良農家のデータベースを構築し、対象農家の意識転換に活用しました。また、対象農家が市場を訪問して情報を得る活動を取り入れ、市場志向型農業への転換のための動機づけを図りました。さらに、作物多様化による農業所得安定化、節水型点滴灌漑の改善、病害虫防除技術の普及、羊の給餌・飼育・疾病対策、果樹・オリーブの剪定技術の普及、営農記録の普及等も行いました。ジェンダー主流化の一環として、ムスリム特有の社会環境を考慮して、男女農民間の情報・技術格差を緩和するための技術研修も行いました。

一般に地域の優良農家が採用している既存の技術は、その土地の自然・社会環境に合ったものであることが多く、プロジェクトではそれを探し出し、水平展開することで農業普及の効率性を高めました。また、高品質のイスラエル産農作物に対抗するのではなく、あえて避けるためにニッチな作物や作型を取り入れた作物多様化やイスラエル農業に対するパレスチナ農業の比較優位性を生かした営農を通じて、農業経営の改善と安定化を図りました。

日本工営の業務 ヨルダン川西岸地区の農業・農作物市場の概況調査、効果的な農業普及手法の構築、農業普及に活用する技術マニュアルの作成、農業庁職員が実施する農業普及の実施支援、農業庁職員による日本視察の支援、等
土壌伝染性病害が多発する農地で栽培できる接木苗スイカの導入と普及。農地が少ないパレスチナでは、連作に起因する病害虫の防除技術が必要とされています。
女性農民のエンパワーメントのための養蜂技術研修。パレスチナの女性農家は、宗教的な背景もあり、新技術を得る機会が男性に比べて少ない傾向があります。
国名 セネガル
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 セネガル川流域灌漑稲作生産性向上プロジェクト
実施期間 2016-2021
プロジェクト内容

セネガルは、貿易赤字解消と食料安全保障の確立のため、コメの自給達成を目標に掲げていますが、未だ自給を達成できず、輸入に依存している状況です。セネガル川流域は、灌漑によるイネの二期作を通じた生産量の増加が期待されていますが、様々な問題に直面し、二期作が実現できていませんでした。

本プロジェクトでは、セネガル川流域のコメ生産量の増加に貢献すべく、灌漑施設の適切な維持管理、適正栽培技術の普及、収穫後処理技術の改善、農業機械の効率的な運用、二期作の推進を図りました。また、セネガル川流域のコメセクター発展に向けた開発戦略を策定し、セネガル政府より承認を得ました。セネガル政府は、本戦略に基づき、コメセクターへの支援を行っています。

日本工営の業務 セネガル川流域におけるコメ生産の現状と課題の把握、セネガル川流域のコメセクター発展に向けた開発戦略の策定、普及員と生産者組織への灌漑施設維持管理・水管理にかかる研修の実施、普及員への適正栽培技術にかかる研修の実施、収穫後処理関係者への技術研修の実施、農業機械オペレーターへの技術研修の実施、普及員と生産者組織への二期作計画策定にかかる研修の実施、等
水路改修の実践研修。作付開始前に施設の問題を把握し、生産者自身が施設の維持管理作業を行いました。
苗代への播種研修。実践を通じて生産者に対し適正技術の移転を行いました。圃場均平の実践研修。播種前に圃場を均平にし、適切な水管理ができるようにしました。
国名 ケニア
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名

北部ケニア干ばつレジリエンス向上のための総合開発及び緊急支援計画策定プロジェクト(フェーズ1:ECoRAD1)

トゥルカナ地方の持続可能な自然資源管理及び代替生計手段を通じたコミュニティのレジリエンス向上プロジェクト(フェーズ2:ECoRAD2)

実施期間 2013-2015(フェーズ1)/2017-2022(フェーズ2)
プロジェクト内容

日本で災害というと地震と洪水が最初に想起されますが、アフリカ諸国では、まず干ばつを挙げる国が多いのが実情です。2008-2011年に「アフリカの角」地域で発生した大規模な干ばつでは、1,330万人が被災し、食糧支援や栄養改善、保健衛生、飲料水などの人道支援が必要な状態に陥りました。

国土の8割を乾燥地・半乾燥地が占めるケニアでも、2008-2011年の干ばつでは、被害総額1兆4,200億円にも上り、その対応が喫緊の課題となりました。本プロジェクトでは、干ばつ被害が発生した際の緊急援助だけでは不十分であり、常日頃から「干ばつに対する強靭性(レジリエンス)」を向上させておくことが重要である、との考えから、遊牧民に対する干ばつレジリエンス向上活動を実施しました。

日本工営の業務

フェーズ1:ため池建設・井戸掘削による新たな水源建設、既存井戸の維持管理指導、太陽光発電を利用した揚水ポンプ導入、家畜マーケット振興、養蜂業支援、養鶏支援、小規模ビジネス支援

フェーズ2:井戸掘削による水源確保、水資源GISデータベース構築、牧草栽培圃場導入、女性グループに対する小規模野菜栽培支援、小学校給食における栄養改善支援、小学生に対する「野菜栽培絵日記教育プログラム」の実施、害木駆除と製炭促進

上記の活動に対する計画/設計、実施/運営、評価/モニタリング業務全般

プロジェクトで建設したため池とそこに集まる数千の家畜。ため池建設計画を策定する際には、遊牧民の行動パターンや家畜が好む牧草の種類など、京都大学とも連携し、文化人類学的な視点も加えた活動を実施しました。
日本の小学校で行う「アサガオの観察絵日記」にヒントを得て実施した野菜栽培絵日記教育プログラム。野菜栽培普及のため、遊牧民の子供たちに夏休みに裏庭で親と一緒に野菜を栽培してもらう活動を実施しました。
国名 セネガル
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 一村一品運動を通じた地場産業振興プロジェクト
実施期間 2011-2014
プロジェクト内容

セネガルでは農村部の住民の貧困度が高く、国の貧困削減戦略においては、農村部住民の多くが従事する手工業セクターの強化が取り組むべき課題の一つとして掲げられています。他方、日本政府はアフリカ地域における一村一品運動の展開を支援しており、その一環として、セネガル農村部の零細手工業従事者の能力強化を通じた農村部住民の所得向上ならびに地域経済活性化を目指しました。

日本工営の業務 プロジェクトでは、ファティック州とカオラック州を対象に、地域資源を活用した所得創出活動を促進するための一村一品運動モデルの構築と手工業セクターの強化を図りました。三段階の選考システムを設け、生産者からのボトムアップにより、ポテンシャルのある地域産品を提案してもらう手法をとりました。また、その過程で生産者が競い合うことで、製品の品質、生産体制の効率性、ビジネスプランの重要性について生産者自身が考え、気付くことで、ビジネスに対するオーナーシップ醸成と持続的な生産改善を図りました。
オーガニックとフェアトレードの認証を受けているビサップ(ハイビスカス)の生産者です。ビサップ茶など製品の一部は、海外にも輸出されています。
消費者からのフィードバックをもとに改善策を考えるための機会を設けました。生産者が自分たちで「明日からでもできることは何か」、意見を出し合いました。
国名 ナミビア
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 北部農業開発マスタープラン策定調査プロジェクト
実施期間 2014-2017
プロジェクト内容

ナミビア北部は年降水量が200~500mmの乾燥地帯で、大半の農家が自給自足で天候に大きく左右される不安定な小規模農業を営んでいます。そのため、多くの小規模農家が職を求めて首都やその他の都市に流出していますが、都市においても受け入れる基盤が整っていないため、国全体として雇用問題や経済格差が大きな課題となっています。そのため、ナミビア政府は人口の約60パーセントが居住する北部地域の小規模農家支援を通じて、それらの課題解決に取り組んでいます。

日本工営の業務 本プロジェクトでは、農業・水・森林省(MAWF)への技術支援・能力強化とパイロットプロジェクト運営を通じた小規模農家の生計向上に貢献する農業・畜産の技術開発・検証、長期的な北部農業開発の計画づくりに取り組みました。そして、それらの結果をもとに、2030年までの農業・畜産開発のための将来計画(マスタープラン)を取りまとめました。同計画は、対象4州における持続的な作物生産・家畜飼養の複合経営システムの確立を目標としていて、作物生産、家畜飼養、営農技術の分野における多様な技術方策から構成されています。
政府の農業普及員に対する農業技術研修。干ばつ対策のためナミビアの主食のトウジンビエと他作物の混植技術の実証を行いました。
持続的な農業発展のため、農民グループ形成・グループ強化、グループ会計管理、協同出荷・協同購入に係る技術研修を実施しました。
国名 ペルー
発注者 国際協力機構(JICA)
プロジェクト名 カハマルカ州小規模農家生計向上プロジェクト
実施期間 2011-2016
プロジェクト内容

ペルー農村部では貧困世帯が多く、これらの世帯の所得手段である農業の収益性向上が課題となっています。プロジェクトでは、北部のカハマルカ州において特に貧困世帯が多いアンデス山脈のおよそ標高2,500~4,000mに居住する農家を対象に、市場ニーズが高く換金性の高い作物の生産性向上を目指しました。

重要な農業生産資材である高品質の種子の生産プロセス改善、農民組織化、栽培技術向上、収穫後処理・加工改善、流通までの生産チェーン全てを網羅する幅広い活動、加えて、植林や被覆作物の導入など水土保全の活動も実施しました。

特に重視したのは、農業生産者、仲買人、加工業者などの生産チェーンを構成するアクターの信頼性向上(連結)です。ペルーの農村部ではこれらアクター間の信頼が不十分で情報ギャップがあったため、それぞれの効率性が低く、その結果、全体で利益が上がらない状況となっていました。プロジェクトでは農家と仲買人共同での計画的出荷の実施、農家と加工業者共同での産品付加価値化活動等を行い、互いが求める農産物の仕様や互いの役割に関する理解を高めることなどを通じ、生産チェーンのアクター間の情報共有の円滑化と信頼性向上を図りました。また、地域住民や児童に対して、簡易実験キットを使った等高線植栽や被覆作物による土壌浸食防止と水の涵養効果の実演等、水土保全に係る地域社会全体を対象とする啓蒙活動も行いました。

日本工営の業務 農作物マーケティング調査の実施、農民組織の形成・強化、生産チェーンを構成するアクターの信頼性の強化、栽培技術・農産物加工・集出荷技術の技術移転、水土保全技術の移転と啓蒙活動、これらに関するガイドライン・マニュアルの作成、ペルー政府職員のための本邦研修の実施、等
生産チェーンにおける農業生産者、仲買人、加工業者などのアクター間の信頼性向上(連結)の重要性を理解するためのシミュレーションゲームを取り入れました。
天然色素の原料となる紫トウモロコシ。この地域では新しい産品でしたが、首都リマの加工業者のニーズが高い作物で、両者を結ぶことで直接販売を実現しました。
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