成長を続けるジャカルタに必要な交通の最適化をスマート技術でサポート ビッグデータを活用したASEAN都市のMaaS基盤整備支援

INTRODUCTION

2016年にフィンランドで発祥したMaaS(Mobility as a Service)の概念は、交通事業者ごとに独立していた情報発信や予約・決済などを一元化したもので、公共交通のワンストップサービスを実現するものです。その画期的な試みは、世界中に波及しており、人流の最適化や渋滞の緩和を目指すアジアの都市でも導入を進める動きが出てきました。日本工営は、半世紀以上エンジニアリングサービスを提供しているインドネシア・ジャカルタで、MaaSを軸とした交通課題の解決を目指す事業をスタートしました。現在は、2023年のリリースを目指して協力企業とともに事業開発を行っている段階です。今なお成長を続ける人口1000万超の大都市に最適な課題解決方法は何か、ビッグデータを扱うスマートシティづくりは本番を迎えています。

PROFILE

  • 日本工営株式会社 営業本部 シンガポール事務所 所長
    (営業本部ビジネスインキュベーション統括部 兼務)

    鵜澤 邦泰(うざわ くにひろ)

    2006年入社。経営管理本部企画・財務部(当時)配属。2009年から2015年まで、日本工営の子会社、中南米工営株式会社に出向(パナマ駐在)、中南米の各拠点(関係会社・事務所)の財務・会計面の管理に加え、域内の営業活動に携わる。本社帰任後は、コンサルタント海外営業部にてODAおよび民間営業に従事。2019年から、シンガポールに赴任し、東南アジアの新規事業開発に携わる。

  • 日本工営株式会社 交通政策事業部 交通都市部 課長 営業本部シンガポール事務所

    胡内 健一(こうち けんいち)

    2006年入社。主に国内市場にて道路政策、交通政策の案件に従事。2018年から事業領域拡大を志向するインフラマネジメントセンター、事業創生センターにて都市・交通分野の事業開発に奮闘。技術政策での部署横断の取組、同期鵜澤との再会を機に、交通、都市マネジメント市場を対象としたビッグデータを活用したサービスの開発プロジェクトを開始。

  • 日本工営株式会社 交通政策事業部 交通都市部

    石川 太陽(いしかわ たいよう)

    2020年入社。入社以来、福岡支店 交通都市部にて交通渋滞対策、自動運転実証、公共交通検討など交通関連業務に従事。2022年より本社・交通政策事業部・交通都市部の配属となり、Jak Lingko(ジャカルタの交通手段間の支払いシステム)プロジェクトをはじめ、都市計画・交通計画に資するデータ利活用検討のプロジェクトに携わる。

  • 日本工営株式会社 交通政策事業部 交通都市部

    増田 泰知(ますだ たいち)

    2020年入社。主に国内を対象として自動運転の実証実験やトラック隊列、物流関係の業務に従事。また地方都市におけるスマートシティ実装支援にも携わり、今年度からは国内のスマートシティ関連業務と並行して海外でのスマートシティ、MaaSプロジェクトにも参画している。

  • 部署名および役職・インタビュー内容は取材当時のものです

STORY

人口増加中のエリアも含め、交通の技術革命から人々を幸せにする事業を創造

―ジャカルタは、まさに今、成長真っただ中の都市です。街の中はいつも渋滞し、排気ガスが蔓延することは日常茶飯事です。このような状況が経済や環境に良いわけがありません。最新のMaaSの概念とスマート技術を用い、交通の改善から都市の未来を描いていこうと日本工営は考えました。このプロジェクトに携わるメンバーから、現在の進捗状況を聞きました。

混雑な交通環境
胡内

この事業は、いまジャカルタで25%しか使われていない公共交通を、もっと使っていただけるようにすることが最終目標です。インドネシア政府やジャカルタ市が考えている目標は、MaaSの技術を使用して単に利便性を向上させるだけで達成できるものではありません。車中心の社会からライフスタイルを変えていくことが求められています。ジャカルタは人口がすでに1000万人の大都市です。その上、さらに商・工業地帯やベッドタウンの開発が目白押しの状況です。郊外に住む人が自らのエリアで満足に暮らせ、ジャカルタ中心部への往来もスムーズな環境づくりも含めた交通の改革が求められています。その土台になるのがMaaSの概念で、ジャカルタの独自性を掛け合わせたオーダーメイドの仕組みづくりが進行しています。

ジャカルタ都市高速鉄道建設事業
鵜澤

2019年3月に開通したジャカルタ都市高速鉄道建設事業(MRT南北線)も私たちの実績のひとつですが、これはハード(インフラ)を作る事業でした。この路線を本当の意味で活かしていくためには、ソフト(サービス)の充実が必要不可欠です。そこで、世界的にも評価が高まっているMaaSの概念をベースにして、交通課題の解決をする事業開発に取り組んでいます。もちろん、私たちはコンサルタントですから、現地の決済システムや個人情報を含めたビッグデータの収集の専門家ではありません。そこで、この事業では現地で提携先を見つけて協力関係を育み、私たちは事業推進・事業継続に専念する道筋をまずは作りました。

インドネシア政府やジャカルタ市、そして不動産事業者や交通事業者などの民間企業へのデータ分析サービスも構想しています。私たちの計画や提案を実行していくことで、ステークホルダーが成長し、公共交通機関の利用率の向上、環境負荷の低減に繋げていくことを目指しています。最終的な目標は、私たちが持つインフラや建築という技術を発揮していく事業まで結びつけることですが、それも人々の快適さや幸せに資するものでありたいと考えています。新しいデジタル技術を駆使しながら、より確実に、より素早く豊かな空間づくりに寄与していきます。

関わる人が多種多様な環境で、思い描いていた以上の成長を誰もが実感するプロジェクト

―このプロジェクトを牽引しているのは、日本工営のシンガポール事務所です。同国は人種の坩堝(るつぼ)として知られ、スタートアップの立ち上げやすさから世界中の人材が集まる場所にあります。そのような環境の中で仕事を進めていると、苦労もあれば喜びもあるはずです。4名に仕事の様子とやりがいについて質問しました。

鵜澤

前例がないことを始めたので、最初の頃には苦労しました。社内には、現地の決済業者とのパートナーシップで得られた情報がどう現業に結びつくのか、社外には、コンサルタントの日本工営と組むことに何のメリットがあるのか。未来へのストーリーをしっかりと作って根気良く説明することで、社内外から協力を得ることができました。ODAなどでは、日本工営の知名度は高く、むしろブランドと言えるかもしれません。しかし、一歩その外側に出ると、1からのスタートになりました。一方、その苦労はそっくりそのまま、やりがいになっています。もがき苦しむこともあります。でも、それは誰もやっていない領域だからこそです。私が考えが停滞しそうな時にはとにかく動く体育会系出身だから何とかなったのかもしれませんね。結果、国籍も、バックグラウンドも、専門技術も異なる人たちと仕事を進められる環境が整っていきました。

胡内

まさに、これからが勝負の時です。私たちが何を提供できるのか、カタチにしていく段階に入りました。数年前に、会社全体の方針として、これまでのコンサルとは違う商品を作るという部署ができ、その時に私は専門畑から飛び出すことになりました。長い歴史を持ち、自社完結できる仕事が多い国内部署が長かったため、当初は戸惑うこともありました。社内外のさまざまな人と関わり、つながりが増え続けながら前進していくという仕事の進め方に、やっと慣れてきたのかなと思います。新しいわくわくするプロジェクトの中にいますが、常に危機感は持っています。交通の専門技術者として、もっとこの分野を強く価値があるものにしたいと考えています。周囲にいる人たちが個性的で素晴らしいからこそ感じるのかもしれませんね。苦労とやりがいは一体化したものと感じます。

石川

入社3年目で昨年まで福岡支店で交通渋滞対策や交通事故対策、自動運転実証など、交通関連の業務を経験してきました。これまでのコンサルティング業務では、明確な課題や仕様に沿った仕事が求められていたと思います。一方、このプロジェクトでは、検討するだけで終わらず、導入してトライアンドエラーを重ねていきながら、最適な環境を生み出すところまでチャレンジできます。気付いたことは、技術者のスキルに加えて、日本工営としてどういう価値を生み出せるかというビジネスの視点が必要ということです。これは、さまざまな国籍の人たちと仕事進めていく経験の中で学ぶところがとても大きいです。思い描いていた以上の成長の機会がある今、すごく仕事が楽しいです。

増田

石川と同期で、私も今年が3年目です。交通課題を解決するコンサルティング業務を経験してきました。実は、これまでの人生で海外との接点はほとんどなく、仕事で海外の都市に関わるのはジャカルタが初めてです。このプロジェクトに抜擢され、日本との違いにあらためて驚きました。街も人も違います。交通はもちろん風景が異なりますし、そこに暮らす人たちの交通への考え方や仕事の進め方も経験したことがないもの。関係者の数や種類が段違いなので、それぞれの立ち位置や関係性を把握するだけでも一苦労でした。でも、その苦労を補って余りあるほどの経験をしています。先輩たちが切り拓いてきた道を、石川や私の世代が拡大していきたいと思っています。期待されているからこそここにいると思うと、大きなやりがいを感じています。

スマートシティをさらに明確で具体的なものに作り上げていくのが日本工営の使命

―技術者は、求められた仕事だけをしていても大成することはありません。お客様や利用者様が何を望んでいるのか、そこを理解して、喜ぶ人を可能な限り増やすことがプロフェッショナルの仕事と言えます。営業職や技術者として、何にこだわり、どのような未来の姿を思い描いているのかを聞きました。

鵜澤

チームの構成にこだわっています。可能な限り多様な国籍・バックグラウンドを持つメンバーを増やしたいです。その方が楽しいし、間違いなく情報量も総合力も向上します。日本人にしても、できれば違うキャリアを積んだメンバーでチームを組みたいです。ぶつかることもありますが、それは真剣だからだし、活性化する方が圧倒的に多いです。未来へ向けての目標は、このぼんやりとした「スマートシティ」という言葉を、「これが私たちのスマートシティだ」と明確にした実績を残すことです。

胡内

今この組織この内容でプロジェクトを進めていく中で、交通分野の価値向上や中身に強くこだわっています。交通やモビリティに関わるチーム全体を強くしたいです。組織として交通のスペシャリストという価値が備われば良いなと思います。そうなっていくことで、提供する価値や解決すべき課題を意識して自律的に動くことができます。アップデートされた組織になることを目標にしています。

石川

公共交通に興味があり、大学でも研究をしていました。車だけに頼らず、自転車、徒歩、公共交通で十分に生活できるような社会づくりに貢献したいです。MaaSやスマートシティの考え方に近い考えを以前から持っていたので、今まさに仕事として取り組めることが幸せですし、実現を目指していきます。

増田

今はまだ技術的なこだわりを語れる段階ではないですが、仕事に臨む姿勢として、「日々、一生懸命」ということはいつも考えています。私も交通や都市計画を大学の時に勉強してきたので、まずはこの分野の専門家・技術者になりたいです。MaaSやスマートシティは、日本工営の従来のイメージとは異なる領域にいると聞きます。でも、継続していくことで、やがては「その分野は日本工営だ」となるようにしたいです。豊かさや幸せを享受するための技術を今、磨いているところです。

―日本工営は、単にスマート技術を扱うだけではなく、その先に起こるライフスタイルの変化や都市の成長まで見据えたプランニングを行っています。創業時からその国や都市に寄り添ったオーダーメイドの海外技術協力を行ってきた私たちだから可能なスマートシティの実現を、これからも目指します。

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