インタビュー

物流の最適な計画から、世界に多様な幸せを感じられる社会をつくる

ロスの少ない物流でエネルギーを最適化、地球にやさしく、経済効果と環境課題を解決

INTRODUCTION

海に面した国は、輸出入の窓口となる港湾都市の機能性だけでも、国力が変わります。増加する貨物量を適切に読み取り、制御していかなければ、物流効率が悪化。大きな経済損失を招くことになります。世界規模で散見される物流ロスを防ぐために、日本工営では物流計画推進室を設置。その仕事内容とやりがいを、交通計画のプロフェッショナルとして参画する交通計画部の後岡さんに聞きました。

PROFILE

日本工営株式会社・コンサルティング事業統括本部/交通政策事業部/交通計画部/課長(物流計画推進部兼務)
後岡 寿成(うしろおか ひさなり)

2000年入社。中央研究所に配属後、大阪支店を経て中央研究所に復帰。2017年より海外事業部・交通計画部に配属。渋滞解消など、国内でも数少ない交通計画のプロとしてさまざまなプロジェクトに従事するとともに、物流計画推進室に兼務

※部署名および役職・インタビュー内容は取材当時のものです

STORY

膨大なチェック項目のパラメータを変化させ、最適解を探る。

−−−貨物船に乗せられたコンテナが、水揚げを待っているとします。降ろすヤードは不足し、トレーラーも貨物の積み込みや荷下ろしの順番待ちで港湾周辺の道路で行列をなしています。貨物列車や内陸水運が運べる量は限られていて、次の便もまだまだ先のこと。仮にトレーラーに積まれて無事にヤードを出たとしても、バイパスは渋滞で、受け取り先の倉庫はすでに満杯。すべてがスムーズなら、半日で目的地に着くはずが、3日を要しました。
このようなことが、各国で起こっています。特に成長著しい開発途上国では、増えゆく貨物量への対応が後手に回り、生産も消費もポテンシャルを活かせていません。そこで、日本工営が複数の大規模プロジェクトを推進するバングラデシュを例に、物流計画推進室の後岡が、改善プランのシミュレーションを行いました。

後岡:バングラデシュの大きな港のひとつにチッタゴン港があります。現在は90%以上の国際貨物を取り扱っており、コンテナ取扱量は港湾容量を上回っている状況で、周辺道路は慢性的に渋滞しています。まさに先の例そのものの状況です。
バングラデシュでは新しくマタバリ港の建設が進められています。既存の港湾が手一杯の場合、貨物のシフトをさせるためにもうひとつサブになる港湾を建設することは、非常に良い手法です。コンテナの取扱量が増えますし、何よりも一気に渋滞緩和を実現できます。ただ、港湾の位置や面積、機能、周辺のインフラ状況などにより、港湾の使われ方が変わってきます。
バングラデシュではトラックによる陸上輸送の他、鉄道や内陸水運も使えるため、各輸送手段の容量と現在の輸送割合を確認した上で、マタバリ港が運用開始された場合、どの程度利用されるのかシミュレーションを行いました。各輸送手段の容量や運行頻度を変更することにより、どれだけ貨物シフトが行われるのかを、シミュレーションしました。
チッタゴン港の場合は、貨物船が到着すると一気にトレーラーが集まって渋滞が引き起こされるとのことで、待避所になる大きなパーキングを作ればどう解消するかもシミュレーションしました。
道路輸送に関しては、車両を1台単位でシミュレーションできるソフトが販売されています。しかし、私たちは道路計画だけではなく、都市や港湾の機能も含めた総合的な設計を求められる立場なので、独自に道路輸送に関するソフトを開発しました。

図 物流事業と物流計画における予測ツールの活用イメージ

物流の仕事は、人体におけるお医者さんのような仕事。

−−−普段は交通計画部に所属し、交通渋滞の緩和や、より安全な交通の在り方を追い求めている後岡。特に大渋滞が起こるバングラデシュの物流計画は、中でも得意なシミュレーション領域だったようです。交通を専門としながらも、物流の仕事に携わる中で感じていることは、どのようなことなのでしょう。

後岡:物流計画の仕事を例えると、人間における血流のお医者さんのようなものかもしれません。血がドロドロになったり、血栓が詰まったりしないように予防する。仮になってしまっても、手術の計画ができる。何よりもまずは、健康な状態かを検査する。つまり、経済的な健康を、物流の視点で支援しているのです。その国にとっては、せっかく経済成長ができるチャンスなのに、対策不足でその機会を逃すことはもったいないですから。

SDGs・エコ・途上国支援・文化理解、あらゆる観点が育まれるやりがい。

−−−港湾とその周辺の環境については、世界中のデータがすでに存在しています。既存のフォーマットに従って、効率的に計画できそうですが、後岡は、各国の環境や諸事情に合わせた丁寧な設計こそ、長くその国で活用されると信念を話します。

後岡:極端な例になりますが、バングラデシュでは、自転車に客席を連結した「リキシャ」という自転車タクシーが、庶民の足として定着しています。相当な量が走っているので、誰もが交通渋滞の原因と分かっていますが、同時に我が国の文化であり必要な職種とも思っています。その考えを知ると、軽々にリキシャの排除は考えられません。その国の文化や物流拠点都市の環境を理解し、町に暮らす人々が歓迎できるソリューションこそ、プロフェッショナルの仕事であり、腕の見せ所です。
また、効率的な物流網は、地球に優しいことも大きな特徴です。渋滞を解消すれば、排ガスが激減します。そもそも、物流の効率化は、産業基盤の強化に直結するもの。SDGsで掲げられた17の目標のうち、9番目の目標に強くマッチする仕事です。
幸い、日本工営には、鉄道、港湾、空港などを専門にする部があり、歴史もあるので相当量のノウハウが蓄積されています。各部の専門家たちを頼ることも、仕事の質を上げるコツ。物流領域は特に裾野が広いので、オール日本工営で取り組んでいると感じます。

−−−計画したものがカタチになり、人々の役に立つことが何よりもうれしいと話す後岡。日本工営の物流計画のコンサルティングは、今日も世界各地で多様な人々の幸福を実現しています。