インタビュー

再生可能エネルギーのアグリゲーターとして、国力アップの一翼を担う

アグリゲーション技術で再生可能エネルギーの未来を描く

INTRODUCTION

エネルギー資源に乏しい国、日本。明治維新で開国してからの我が国は、常にこの問題に翻弄されてきました。1950年代以降、一度は原子力発電に大きくシフトしたものの、東日本大震災により、国は大きく方針を転換。時代の波も大きく影響し、現在、再生可能エネルギー(以下、再エネ)への取り組みが加速しています。この再エネ拡充の鍵を握るのが、発電施設や電力市場、需要家などを結ぶアグリゲーターという存在。日本工営では、2022年4月のFIP制度の施行に合わせて、アグリゲーション事業に参画します。その取り組みとやりがいを、エネルギー事業統括本部の片桐さんと小川さんに聞きました。

PROFILE

日本工営株式会社・エネルギー事業統括本部/営業戦略室/副技師長
片桐 勝広(かたぎり かつひろ)

1990年入社。電力事業本部に配属後、エネルギー事業部を経てエネルギー事業統括本部営業戦略室 副技師長に就任。主に電力会社向け変電設備やダム管理設備の制御システム構築の技術営業のプロとして従事し、それをコアに再エネに関する事業検討など、さまざまなプロジェクトに従事。現職ではそれらの経験を活かし統括本部大での事業戦略の立案・実施を担う。

日本工営株式会社・エネルギー事業統括本部/パワー&デジタル事業本部/研究開発室/室長(事業戦略本部/デジタルイノベーション統括部兼務)
小川 隆行(おがわ たかゆき)

1994年入社。電力事業本部に配属後、本社部門などを経てエネルギー事業統括本部パワー&デジタル事業本部研究開発室に就任。2012年より再生可能エネルギーや蓄電池システムに関する製品の研究開発に従事するとともに、現在は、エネルギー事業統括本部営業戦略室、事業戦略本部デジタルイノベーション統括部も兼務。

※部署名および役職・インタビュー内容は取材当時のものです

STORY

再エネ発電の安定供給を目指し、我が国のエネルギー資源問題に終止符を打つ。

−−−社会全体が、再エネの拡大を求めている時代が到来しました。ただ、再エネには長らく解決できない課題があります。それは、安定的に電力を供給し続けること。確かに、太陽光、風力、流れ込み式や従属条件の水力を利用した発電は、環境や天候に大きく発電量が左右されます。さらには、蓄電技術がまだ発展途上にあるため、安定供給は至難の業。日本工営では、再エネ発電の必要性が高まると判断し、これらの課題を解決するとともに、RE100の電力を安定供給できる存在になろうと努力を続けています。

小川:再エネの発電量を予測することは、今なお非常に難しい課題です。水力発電については、これまでのデータ蓄積と分析から、予測を立てやすくなってきました。しかし、太陽光発電については、まだ技術開発の余地が多分にあります。特に狭域で短時間の気象予測は、精度を向上させていかなければなりません。少しでも雲がかかってしまうと、発電効率が一気に落ちてしまうからです。また、予測地点が数キロ違うだけでも、太陽への雲のかかり方は変化します。そのため、これまでにないレベルでのピンポイント予測が必要不可欠。そこで、ウェザーニュース社に協力していただき、より効率的な発電を可能にするAIの開発を進めています。

片桐:2022年4月にアグリゲーターのライセンス制と改正FIT法からFIP制度が導入されます。私たちは、このタイミングで、再エネの電力を集めて供給するアグリゲーターになろうとしています。そのためには、不安定な再エネ発電量を予測する能力、予測(計画)と実際の電力を一致させる能力(蓄電池活用を含む調整能力)、電力市場で取引する能力などが必要になります。かなり総合的な能力が必要になりますね。
日本工営では、2020年7月にエネルギー関連部署を統合した「エネルギー事業統括本部」を設置しました。さらには、日本よりも再エネについてリードしている欧州で再エネ企業を設立したり、欧州アグリゲーター企業に出資したりするなど、最先端の情報と技術を獲得し、日本版の再エネとして落とし込もうとしています。

RE100の実現は、SDGs達成の一丁目一番地。国や世界の未来を担う使命感を持つ。

−−−2020年、菅総理(当時)は2050年までにカーボンニュートラルを実現すると世界に宣言しました。しかし、2020年度の再エネ発電の割合は18%。まだまだ化石燃料に頼らなければならないのが実情です。FIP制度の内容もまだ固まっておらず、再エネ事業への参入が、企業にとって利益をもたらすものか否かも不透明な段階。しかし、私たち日本工営は、この誰もが様子見をする状況の中で、先陣を切ることにしました。その取り組みのひとつが、経済産業省が一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)を通じて公募した「令和3年度 蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業費補助金(再生可能エネルギー発電等のアグリゲーション技術実証事業のうち再生可能エネルギーアグリゲーション実証事業)」に申請し、採択されたことです。

片桐:現在の固定価格買取制度(改正FIT法)では、再エネの電力をかなり高い価格で買い取っています。その価格は再エネ賦課金として電気料金に転嫁され国民から徴収されており、今年5月に2.8円/kWhから3.36円/kWhに値上げされFIT認定の再エネ発電が増えるたびに値上がり続ける仕組みになっています。再エネ普及率が100%となったら約4倍の負担になることが想定され、現在のFIT制度では再エネ普及拡大に限界があることがわかります。そこで、2022年4月に再エネ電力を発電市場に組み込むFIP制度が始まります。FIP制度は、再エネ賦課金の国民負担を軽減するための制度であり、FIT制度で免除されていた発電バランシング業務(発電量予測・計画、電気販売、インバランス責務など)が再エネ発電事業者に課せられことになります。中小規模の再エネ発電事業者では、発電バランシング業務を行うことが困難なため、それらを束ねて業務を代行するアグリゲーターが必要となりFIP制度導入に合わせてアグリゲーターのライセンス制が導入されることになりました。もちろん、アグリゲーター事業への参入は相応のリスクはあります。しかし、再エネ導入拡大の岐路に立った状況で国策に賛同しいち早く取り組むことで得られる事業ノウハウの方が当社のエネルギー事業にとって有益なものと考えています。今回の実証事業では、太陽光発電のみでなく、グループ会社が管理・運営をしている全国9箇所の従属条件の水力発電施設の発電予測も対象としております。

図 日本工営の目指すアグリゲーション事業のイメージ

小川:現在の状況を整理すると、世界的に再生可能エネルギーの中心の時代が到来し、日本でも電力自由化や発送電分離が進み、電力を取り巻く環境は新しい時代に入っています。10年後や20年後に振り返った時には、ここ数年が日本の電力システムが大きく変わった節目の時期になるのではないか、と感じています。そのような時に、制度作りに参加し、ビジネスそのものを作っていく。とても大きなやりがいを感じています。特にこれまで高額だった蓄電池も価格の低下が進んでいますので、蓄電池を活用していけば、長期的には日本も再エネ100%に近づいていけると考えています。
また、我々が携わっている製品やプロジェクトは、SDGsの目標を国として達成していくための一丁目一番地とも言えるものです。SDGsの17の目標の中でも、7番目の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」は、まさにそのものですし、8番、9番、13番もかなり満たしていくものになるでしょう。

片桐:SDGsに関しては、巡り巡って他の目標の多くも満たしていくプロジェクトになると感じています。何よりも、実証のための実証ではなく、来年度の事業化を目指した実証ですから、私たちにとっては、すでに本番が始まっている。前例がないことに取り組んで、それが日本のため、国民のため、そして世界のためになるので、私もとてもやりがいを感じています。

−−−「まずはエネルギー自給率だけでも高めていけるような将来を」。この思いを胸に、日本工営のエネルギー事業統括本部は、今日も日進月歩の技術を自らのものにすべく、研鑽を積む日々を送っています。