県民の高い防災意識が生んだ『静岡県防災通信ネットワークシステム』構築プロジェクト

災害発生時、都道府県は国や地方自治体などから寄せられる情報をとりまとめ、一刻も早く支援体制を整えなければなりません。こうした災害時における意思決定や情報のやりとりに使われるのが『都道府県防災行政無線』と呼ばれる通信網です。日本工営は2008年から2015年にかけ、静岡県が災害時に利用する防災行政無線のデジタル化移行プロジェクトの一員として、基本構想の策定や基本・実施設計、無線局の施工監理などに携わりました。

7年の歳月をかけデジタル方式への全面移行を達成

静岡県は国内でも有数の防災意識が高い県として知られています。その防災意識の背景にあるのはマグニチュード8クラスが想定される「東南海地震」に対する強い懸念です。太平洋に面する静岡県南部の沖合約100kmの海底には、駿河湾から四国沖にかけて「駿河トラフ」、「南海トラフ」と呼ばれる深い溝があり、ここに溜まった地殻のひずみが近い将来大きな地震を起こすと予想されています。さらに県内陸部には地質構造線や活断層があり、土砂災害が懸念される箇所も多いことから、災害への備えは静岡県にとって優先順位の高い取組みとなっているのです。日本工営は静岡県とともに、運用開始から15年あまりを経て設備の老朽化が進んでいた『静岡県防災通信ネットワークシステム』の全面更新に2008年から取組み、約7年の歳月をかけ、アナログ方式からデジタル方式へのシステムの全面移行を成し遂げました。日本工営は基本構想段階かシステムの基本・実施設計や約200ヶ所におよぶ関連施設の施工監理を担当。プロジェクトの成功に大きな役割を果たしました。

「使いやすさ」と「強さ」を兼ね備えた防災無線システム

『都道府県防災行政無線』は、内閣府災害対策本部や防衛省、気象庁、警察庁など国の行政機関や公共機関が接続された『中央防災無線』と、消防庁が提供する『消防防災無線』、住民の避難や救助・救援を支える『市町村防災行政無線』の間に位置し、県と市町村、県の出先機関と防災関連機関との間で、情報をやり取りするために利用されています。静岡県が新たに整備した防災通信システムは、災害時においても、FAXや電話による個別通信、一斉通報、データや画像伝送、専用回線によるホットラインが使えるよう、衛星回線や地上系無線回線を組み合わせたデジタル通信網を構築。災害時の混乱の中であっても、誰もが機器を使いこなせるよう、静岡県職員と協議を重ね、管理画面のデザインや情報の配置の仕方にも徹底的にこだわりました。またシステムのデジタル化により、複数の災害情報やヘリコプター・監視カメラなどから送られてくる大容量データをひとつの管理画面で扱えるようになったことで情報の視認性も向上。バックアップ回線の2重化などシステムの堅牢化にも取組み、静岡県は「使いやすさ」と「強さ」を兼ね備えた防災無線システムを完成させました。

優れた防災通信システムをつくるために尽くした配慮の数々

日本工営は、このプロジェクトの設計を担当するにあたり、導入したシステムが早々に陳腐化するのを防ぐため、将来の技術トレンドを読みながら採用すべき技術や機能を選定。また、災害時に機能する情報伝送用中継局を設置するため、静岡県全域の候補地をくまなく回り技術検証を実施したほか、市や町による無線設備の共用や、使われなくなった民間通信施設の再利用を推し進めることで予算の縮減にも貢献。施工監理においては、詳細でわかりやすい手順書の作成や、導線を考えた機器の配置などにも心を配り、優れた防災通信システムをつくり上げるための努力を惜しみませんでした。また、山間部の険しい場所での施工や高所作業を無事に終えられるよう、施工指導や品質チェック、工程監理にも多くの時間を割いた結果、大きな事故もなくプロジェクトを終えることができました。日本工営は『静岡県防災通信ネットワークシステム』プロジェクトで得た経験を糧に、国内のみならず、今後は海外においても、信頼性の高い防災通信システムの普及に努めていきます。

業務対象となった都道府県防災行政無線の位置づけ
様々な場所から送られる災害情報を集約する静岡県庁統制室

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