AIを用いた地すべり地形判読技術の深層学習と自動化 斜面防災技術へのAI活用

NEEDS

防災減災における調査技術の高度化と効率化の必要性

近年の気候変動の激化に伴い、日本では土砂災害による被害が多く発生しています。
斜面の土砂が移動する現象には地すべりや土石流がありますが、これらの現象は発生前に地形上に移動の痕跡を残します。従来は、技術者がこれら地形上に残された痕跡を緻密に判読することにより地形の判読技術を発展させ、土砂災害が発生する可能性が高い場所を予測してきました。
しかしながら、多数の場所を対象に、人力で地すべりの発生する可能性が高い場所を予測することには限界があり、AIを利用した地形判読の効率化や自動化のニーズが高まっています。
日本工営では、深層学習を利用し土砂災害発生場所の予測精度を向上させる技術を開発しています。地形判読技術者が日本で公開されている数値地形情報に基づき作成した判読図を教師データとすることで、技術者が地形判読時に読み取っている土砂移動の痕跡を深層学習でAIに覚えこませ、地すべり地形や侵食地形を一定の割合で抽出する事が可能となりました。

図-1 斜面防災に用いる地形判読の例

SOLUTION

AIによる土砂移動現象の前兆地形の自動判読

土砂災害には、地すべりや土石流が発生する前に発現する現象形態があります。
従来は専門家が時間をかけて地形を読み取り、地すべりや土石流の予見や予防調査を行いこうした現象を判読してきました。地形の判読には、斜面防災に係る専門知識と経験など、高い技術力が必要であり、判読には空中写真や地形図、3次元表現図等様々な情報を利用しています。
日本工営ではこれらの判読をAIの深層学習で効率化、自動化する技術を開発しました。
深層学習技術を利用することで、画像が持つ色の特徴等を自動で抽出する事ができます。この技術を適用することで、技術者が着目する地形的な特徴をAIに学習させ、判読作業の高度化と効率化に活用します。

図-2 地すべり地形のAI推論画像
図-3 浸食地形のAI推論画像

POINT

侵食地形の自動判読と火山防災への活用

火山防災の取り組みへの深層学習活用の技術紹介です。鹿児島県桜島では、火山活動時の降灰とその直後の降雨により、土石流が頻発しています。その土石流発生の前兆現象として、土砂生産場に形成される侵食(リル(注1)やガリー(注2))地形が大きく影響している事が知られており、この侵食地形を事前に把握する事で、土石流発生リスクを事前に察知することができる可能性があります。
侵食地形は地すべり地形と同様に、形成・発達箇所空中写真や地形図から専門家が判読を行ってきました。本技術では、この侵食地形も深層学習により学習させる事が可能であることを紹介します。深層学習は、学習する時間は最大で1日程度の時間を要しますが、推論(画像出力)時間は数時間で可能です。この即時性を活用し、事前に侵食地形を深層学習し、火山の噴火、降灰、そして降雨直後に取得した空中写真をAIに推論させることで、侵食地形の発生場を迅速に予測し、予防措置や事後対応につなげる等、災害リスク低減に向けた活用を展開しています。

  • 注1:リルとは、降水に起因した水の流れによって地表面が削られてできた細い溝のことで細溝(さいこう)ともいう。
  • 注2:ガリーとは、降水による集約した水の流れによって地表面が削られてできた地形のことで雨裂(うれつ)ともいう。
図-4 火山防災におけるAI活用事例と今後の展望

導入実績

  • 令和2年度降灰後土石流の流出解析等検討業務
  • 平成31年度火山噴火時の浸透能調査手法及び流出解析検討業務
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