衛星リモートセンシングによるリスクの大きい地すべりの抽出・監視

CHALLENGE

土砂災害の頻発化

平成29年に発生した九州北部豪雨災害による地すべり調査の様子

近年、日本の全国各地で激甚な被害を伴う地すべり災害が、毎年のように発生しています。地すべり災害は、継続的に滑動することが多く、被害が長期化する特徴があります。豪雨時には滑動速度が速まり、かつ大規模に滑動することで、人家や道路・鉄道等を巻き込み、甚大な被害をもたらすことがあります。一方で、地すべりは平時から緩慢に滑動している場合もあり、動きを監視することにより、動きのある地すべり箇所を把握することができます。
現在、日本国内において、土砂災害警戒区域(地すべり)が、15,180箇所指定されています※。国土交通省砂防部が毎年実施している集計によると、年間100件前後の地すべり災害が発生していますが、これらの中には、土砂災害警戒区域外で発生した事例も認められます。このように地すべり箇所と認識されていなかったエリアの把握・対応が課題となっています。
大きな被害が発生する前に事前対策を行うためには、土砂災害警戒区域に加えて、地すべりの発生リスクが高い、動きのある地すべり箇所を、予め把握しておくことが重要です。

  • 土砂災害警戒区域:土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域。土砂災害防止法に基づき区域設定が行われている。

SOLUTION

衛星干渉SAR解析による地すべりの発生リスク把握

SAR(合成開口レーダー)と呼ばれるセンサーを搭載した人工衛星から、地表面に向けて照射したレーダー波を解析することにより、地表面の微細な変動を把握することが可能です。この技術は干渉SAR解析と呼ばれており、地すべりが大規模に滑動する前の前兆現象である斜面の微細な変動を抽出することができます。

通常、地すべりの把握は、現地踏査や地質調査、現地観測計器によるモニタリング等によって行われています。しかし、土砂災害警戒区域に指定されている箇所のように、地すべり発生の可能性がある斜面は全国各地で多数存在しており、それらすべてを詳細に現地調査することは、人的・経済的リソースの観点から容易ではありません。

当社は、詳細な現地調査を行う前段階のスクリーニング手法として、干渉SAR解析を実施し、対象となるエリアの地すべりの滑動状況を、概略的に把握する取り組みを進めています。干渉SAR解析によるスクリーニング結果や、保全対象の重要度、地域特性等の様々な条件を踏まえた検討を行い、地すべり対策の優先度を評価することにより、いち早く対策が求められる箇所への迅速な対応が可能となります。

また、全国の支店・事務所に200名を超える斜面防災の専門技術者を配置し、地域に密着したサービスも提供しています。干渉SAR解析結果を提供するだけでなく、その後の詳細調査、対策工設計等をワンストップで提供することができます。

干渉SAR解析の概念図

RESULT

干渉SAR解析による地すべりの広域スクリーニング

人工衛星だいち2号に搭載されたPALSAR2によって取得された衛星データを用いて干渉SAR解析を行い、山梨県早川町周辺における広域スクリーニングを実施しました。干渉SAR解析結果の判読と斜面防災技術者による地形判読結果を踏まえて、3箇所の地すべり変動が発生している可能性のある箇所を抽出しました(下図中の赤枠内)。これらの箇所は土砂災害警戒区域には指定されておらず、未知の地すべりである可能性が高い箇所です。一方で、既往の土砂災害警戒区域(下図中の右上)は解析時点においては顕著な変動は認められませんでした。
現在は、より詳細な地すべりの動きを把握するために、斜面変動に特化した干渉SAR解析アルゴリズムの改良に取り組んでいます。

干渉SAR解析による斜面変動監視
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