インタビュー

安全・安心な暮らしの実現に必要な「状況把握」と「提案」を衛星情報サービスで実現

未開拓宇宙ジャンルへチャレンジ

INTRODUCTION

いまや誰もが当然のように使う地図アプリケーション。レイヤーを切り替えるだけで、少し前に撮影された人工衛星からの航空写真をいつでも見ることができます。こうしている間にも、各国・各社の1万をゆうに超す人工衛星が地球上を周回していますが、中には国土の維持管理や災害時の状況把握に使われているものもあります。
日本工営では、これらの人工衛星を活用した「衛星情報サービス」を展開。将来大きな成長が期待されているものの、現状では市場を開拓するところからスタートしているジャンルですが、国土の強靭化と人々の安全な暮らしを実現し、未来の可能性を追い求めるために、私たちは新規事業、宇宙ビジネスを開始しています。

PROFILE

日本工営株式会社・衛星情報サービスセンター・センター長
徳永 博

1992年入社。仙台支店、(一財)砂防・地すべり技術センター出向、大阪支店、東京本社に勤務。防災分野、砂防分野に携わり、自治体業務、直轄砂防事業に加え、ダム、道路など幅広い事業、プロジェクトに従事。2011年より大阪支店技術第二部長、2018年より本社砂防部長、2020年より国土保全事業部副事業部長、2021年7月に新設された衛星情報サービスセンター長。

日本工営株式会社・衛星情報サービスセンター・センター長代理
陰山 建太郎

1994年入社。河川・水工部に配属後、大阪支店、河川部に所属。2018年より河川部長、2020年より河川水資源副事業部長を経て、2021年7月より衛星情報サービスセンター長代理兼、衛星情報サービス株式会社に兼務出向。入社より河川調査、河川改修計画、河川構造物設計など、河川改修事業のプロとして、さまざまなプロジェクトに従事。

※部署名および役職・インタビュー内容は取材当時のものです

STORY

人工衛星の撮影技術は日進月歩。専門特化した対象を俯瞰的に可視化する技術を磨く。

−−−国土開発や施設の維持管理、防災の専門家たちは、さらなるサービス向上のために、人工衛星の撮影データを必要としています。撮影技術は日増しに進化し、現在では一定以上の分解能を持つ光学衛星やSAR衛星が登場。さまざまな撮影対象の状態を可視化しています。
日本工営では、人工衛星から得られるデータと、これまでに蓄積してきたコンサルタントとしての知見を掛け合わせて、社会の課題解決に結びつくソリューションを提案。現在の課題解決と、未来に向けた進展の両側面から衛星情報サービスを展開しています。

陰山:日本工営は、2000年よりも以前から、物を触らずに調べるリモートセンシングの技術開発に取り組んできました。人工衛星を活用したリモートセンシング技術が一気に向上したのは、平成26年度から3年間のJAXAとの共同開発から。堤防の維持管理の効率化に、人工衛星の撮影データを活用すべく技術を磨き上げました。おかげさまで、日本工営がJAXAと共同で開発した「だいち2号の合成開口レーダ衛星によるインフラ変位モニタリング」は、第3回インフラメンテナンス大賞注1を受賞しました。
現在は、堤防の維持管理に加えて、水害における浸水域の把握、土砂災害における崩壊域の把握、都市開発のモニタリング、植生のモニタリング、斜面変動モニタリング、インフラ施設モニタリング、空港のメンテナンスにおけるモニタリングなど、多方面に技術を展開しています。

徳永:人工衛星を活用した技術開発については、民間企業を育成しようという国からの相当な後押しがあります。この動きは、世界でも一般的な流れで、アメリカはもちろん、宇宙に事業を展開しているすべての国に当てはまること。日本国内において、私たちはかなり早くからこの潮流に乗っているのではないかと考えています。
世界のライバル企業も同様ですが、市場形成はこれからで、技術も進化の過程の状態。つまり、仕事そのものが課題発見と解決の場になっています。まだ課題は山のようにあるため、衛星や地図などの専門スキルを持つ企業とアライアンスを組むことで、課題解決から技術を進化させるとともに、事業開発に取り組んでいます。

さまざまな領域のプロフェッショナルが集い、次世代ビジネスの市場を創出する。

−−−人工衛星を活用した技術の領域は多岐に及びます。主なものは三つ。人工衛星そのものを研究開発する領域、人工衛星に搭載する撮影技術の領域、撮影した後のデータを解析する領域です。日本工営はその中でも、現場視点から撮影後のデータの活用方法に強みを持っています。

徳永:日本工営が人工衛星の事業に取り組んでいると話すと、既存の多くの関係者たちが「本当に?」と驚かれます。みなさんにとって、日本工営とはコンサルタントであり、社会インフラに関わる技術者がたくさんいるイメージだからでしょう。もちろん、そのとおりで弊社は人工衛星の専門企業ではありません。しかし、私はむしろ、そこに強みがあると考えています。
人工衛星を飛ばして、さまざまな状況を撮影できたとしても、その先に存在するものは現場です。例えば防災に関して言えば、洪水や浸水、土砂災害の現場も、その対策として行われる治水事業や災害対策の現場も、人工衛星から見る対象そのもの。私たち日本工営は、これらについて国内トップクラスのブランド力とコンサルティング能力を持っていると自負しています。つまり、現場のノウハウを持つ専門技術者の意見や知見は、人工衛星の開発会社と相性が良いのです。
衛星情報サービスセンターは、現在、土砂災害対策に長年関わってきた私に加え、河川のプロフェッショナルであるセンター長代理の陰山を含めて4名の体制で運営しています。加えて、兼務者は、国土保全から1名、統合情報から1名、交通インフラから1名と、社会インフラに関するフィールドを幅広くカバーしています。これからは環境、エネルギー、都市空間、海外部署のメンバーとの関わりも増えていくことは確実ですし、社内外のさまざまな専門性を持つ方々と仕事をできることは、何にも変え難いやりがいととともに、事業開発のチャンスになっています。

陰山:新しいことに取り組むこと自体が好きな性分です。特に人から与えられたものではなく、自らで考えて生み出すものは、なおさらのこと。世間一般の方々が感じておられる日本工営は、専門技術者がたくさん在籍している会社という印象と思います。まさにそのとおりで、これまでも、現在も、お客さまから与えられた課題に対して、真摯にご要望に応えようとしています。しかし、私たちが展開している衛星情報サービス事業は、市場そのものを作っていくことが使命。これまでにはない方向性ですが、誰もがほしい、誰もが真似をしたくなるようなものを作りたい。存在しないものを、どう作るか。そこに最もやりがいを感じています。

市場すらない未開拓のジャンルだからこそ、挑戦する意思を持つ方々と関わり続けていきたい。

−−−人工衛星を用いたリモートセンシング技術の進化は、国土の維持管理だけではなく、世界レベルの社会課題を解決できる可能性もありそうです。日本工営が衛星情報サービスを展開していく未来は、一体、どのようなものなのでしょうか。

陰山:人工衛星を使った事業というと、何かすごいことのような印象を持たれるかもしれません。しかし、実際のところは、人工衛星というひとつの「道具」に過ぎないのです。上空から撮影した状態を私たちが解析することで、いかに付加価値が生まれるか。人々の役に立つ情報を提供するというファーストステップの先には、人工衛星がごく普通に活用される世の中が生まれていると信じています。まずは、同じ志を持つ提携企業と、生みの苦しみを味わっている段階です。(笑)

徳永:陰山が話したとおり、人工衛星の画像データは、上空から対象を捉えたデータのひとつに過ぎません。でも、世の中を見渡すと切り口が異なる非常に相性が良いデータがたくさんあります。例えば、車両のセンサやドライブレコーダーがグラウンドレベルで捉えたプローブデータや、SNSデータ。これらを衛星データと組み合わせると、情報が平面ではなく立体になり、使いやすさも精度も高まります。このようなコラボレーションは、これからどんどん増えていくことでしょう。
現在、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉がよく聞こえてきますが、DXの「X」とは単なるデジタル化ではなく、変化そのものを表しています。この社会に変化を引き起こすきっかけが、日本工営の衛星情報サービスでありたい。今後、人類はさらに宇宙に出ていくことは確実です。月や火星のインフラ開発や、保守開発のような宇宙に進出する起点は、まさに今。振り返ると、2020年代の衛星情報サービス事業こそが、大きなターニングポイントだったとなるように事業開発、研究開発を進めています。

陰山:市場を創出するところからチャレンジしていると話しましたが、そのためには、まだまだ社内外に仲間が必要です。新卒や転職で弊社に入社する人でも、人工衛星や宇宙のことに携わりたい社内の人でも、もちろん提携する企業様でも、共に挑戦する気持ちを積み重ねて未来へと歩みたい。なかなか日本工営にはない人事の積極性ですが、まだ見ぬ未来に挑戦するセンターですから、前例にとらわれず、どんどん前に進んでいきたいです。

無限の可能性を秘めた宇宙空間。今、人類は様々な人工衛星を打ち上げ、データを手に入れられるようになり、各国・各企業が新しい技術の開発に鎬を削っている。日本工営も、そのひとつ。「未知のことにチャレンジする時、心が踊る」とセンター長代理の陰山が話したとおり、いつまでもチャレンジ精神を持ち続け、日本工営は宇宙時代の先端企業を目指しています。

注1:インフラメンテナンス大賞とは、国土交通省・総務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・防衛省が主催し、日本国内のインフラメンテナンスに係る優れた効果・実績を上げた取り組みや技術開発を行った者を対象に表彰するものです。