インタビュー

地域づくりへの架け橋となる水防災プラットフォーム

水害等のリスク情報と被害情報を一元集約し災害死者ゼロを目指す

INTRODUCTION

毎年のように激甚化・頻発化する自然災害。いざ、その時が来た時に、どのように情報を受け取り判断するかで、未来は大きく変わります。現在、防災においても、さまざまな発信元がそれぞれで情報を出していますが、その量はあまりにも膨大。むしろ、本当に有効な情報に接することが難しくなっています。日本工営では、これら多種多様な情報の中から選りすぐりのものだけを一元的に可視化できる水防災プラットフォームの『防すけ』を開発。導入コストも飛躍的に抑え、さまざまな機能をオプションで搭載できることから、多方面において共同開発や採用がすでに決定しています。

PROFILE

日本工営株式会社・コンサルティング事業統括本部/河川水資源事業部/事業部長(事業戦略本部 デジタルイノベーション統括部兼務)
高祖 成一

1991年入社。福岡支店に配属後、広島支店、大阪支店、水工インフラマネジメント部等を経て河川水資源事業部の事業部長に就任。2006年より直轄河川の河川整備基本方針・整備計画や既設ダムの再編・再開発案件に関わるなど、治水・利水計画のプロとして、さまざまなプロジェクトに従事。デジタルイノベーション統括部も兼務。

日本工営株式会社・コンサルティング事業統括本部/河川水資源事業部/河川部/課長
犬山 晶夫

2000年入社。福岡支店に配属後、河川水工部を経て河川部課長に就任。2013年より総合治水、水循環計画、水環境、水防災・危機管理計画、高水・河道計画、浸水想定、地震・津波対策など幅広く従事。近年は、水防災・減災対策に係るプロジェクトに数多く従事。

※部署名および役職・インタビュー内容は取材当時のものです

STORY

社内を横断して知見を集約。治水を軸足に、ニーズを満たす水防災を目指す。

−−−毎年のように、史上最大の降雨が起こります。施設の整備は追いついておらず、既存の施設では許容量をオーバーするなど、ハード面での対策は頭打ちの状態。また、ソフト面においても、リアルタイムでの状況把握や危険性の周知などを満たすものは少ない状況です。加えて、浸水状況などを把握する機器は高額で、自前のシステムでは管理・更新のコストや人材の面で不安が残ります。
これらの課題を一気に解決したのが、『防すけ(商標出願中)』です。地形データを組み込んだ地図データに、降雨、流量、水位、浸水深などをリアルタイムで表示できる基本機能を配備。AI解析やAR/VRなど、高い自由度で追加カスタマイズできるプラットフォームです。開発の経緯や原動力について、チームリーダーの高祖さんと、開発者のひとり河川部の犬山さんに聞きました。

高祖:弊社内には、「技術政策」と「研究開発」という枠組みがあります。さまざまな分野を横断して進める有用なプロジェクトには、会社が支援をする仕組みですが、私は防災の分野に取り組みました。今回の『防すけ』の開発では、関係各部署の知見を集約。専門特化して業務にあたる弊社の中には、たくさんのキラリと光る技術が点在しており、ポテンシャルは元から存在していたと感じました。
課題はいくつも見つけられますが、特にチーム内でテーマとしたのは、「自主避難を促す情報提供とはどうあるべきか」「タイムリーでわかりやすい情報を手軽に確認できること」「各種数値を可視化すること」「衛星やSNSを用いた被災全容把握やAI解析など、豊富なオプションを搭載できること」「クラウドサービスの実装により管理コストを従来の1/10程度まで圧縮すること」「取得情報の変更が簡単にできて、他社クラウドサービスとの連携が柔軟にできること」などです。これらの課題を解決していく中で、『防すけ』は完成しました。足腰がしっかりしているからこそ、さまざまな追加機能やカスタマイズが可能になります。

図 防災プラットフォームの機能

犬山:静岡市さんとの取り組みは、とても学びになりました。浸水が予測される地域にセンサーを付けて実証実験を行ったものです。「センサーを設置させていただけませんか」と一軒ずつ訪問したことで、より地域の中に入ることができました。今後も、地域に根ざした機能を横展開していきますが、地域の方々と話すことで、よりニーズを満たすシステムを目指していきます。

地域の方々が真に望んでいるものを発掘し、全・日本工営の開発力と掛け合わせる。

−−−さまざまな部署が関わるビッグプロジェクトとなった、『防すけ(商標出願中)』の開発。そこには苦労も、やりがいもあったとのこと。

高祖:『防すけ』に関する仕事は、とにかく楽しいです。お客様に喜んでもらえるということは、技術者にとって他に代えがたいやりがいを得られますから。ただ、今は序章に過ぎないことも理解しています。単に情報提供をするのではなく、本当に必要な情報を提供できるように、さらに深掘りしていきます。
治水というものは、国土交通省だけが行うわけではなく、河川管理者だけが行うものではありません。地域のために行うという視点が最も大切です。だからこそ、街づくりや農業農村といった領域と連携し、お互いの資産を掛け合わせながら進めていければと考えています。たとえば、道路や農業施設を上手く使い、そこに治水の機能も上乗せするイメージです。地域に必要なのは、一本化された総合力だと感じています。

犬山:私も、地域の方々が喜ぶ姿をやりがいにしています。最初に『防すけ』の技術開発を始める際に、高祖さんから「やってみるか」と聞かれたときに、「はい」とふたつ返事したことは、今でも鮮明な思い出。河川の専門家として技術を追い求めてきましたが、これからは防災や減災がキーワードです。河川と連動できる新しいフィールドが増えることに、わくわくしています。

治水の領域に留まらず、地域づくりの観点からコンサルティングを行なっていく。

−−−特に豊富な追加機能により、治水および防災に関するプラットフォームとして、他にはないレベルのものとなった『防すけ』。これらの機能を有効利用すれば、どのようなことを実現できるのだろうか。

犬山:今後、気象業務法が変わり、私たちが防災情報を市民に提供できる立場になることを想定して、さらに発展系のサービスを考えているところです。あくまでも個人的な意見ですが、自治体にも、民間企業にも、市民にもアプローチできる私たちは、関係する人たちとのシームレスな関係を生み出せる存在ではないかと考えています。だからこそ、地域に入ることで真のニーズを知ることが大切と考えています。

高祖:次に考えているのは、治水以外の領域と結びつくこと。個人情報の観点はありますが、高齢者の見守りサービスなどとは相性がとても良いと考えています。たとえば、親が一人で地方に住んでいる場合などは、災害時に実家が安全な地域かどうか不安になりますし、仮に危険が迫っていても、避難してくれたかどうかわかりません。そのようなケースでも、タグ付けひとつで、行動を追えるようになります。避難所の情報も含めて掲示すれば、地域のさまざまな情報としての価値が生まれると考えています。このように、アイデアと搭載できる技術さえあれば、さまざまな領域が対象に。『防すけ』の可能性を、これからも広げ続けていきます。

−−−水防災プラットフォームという名称は、ともすると河川をイメージさせるものかもしれません。しかし、本来「水」は、川以外の空気中や陸にも存在するもの。日本工営の河川のプロフェッショナルたちは、水のように形や場所に縛られず、自らの得てきた経験を広く地域のために提供していきます。