インタビュー

エンフラの実現から、人にやさしいスマートシティを開発する。

黒川紀章・共生の哲学と日本工営のDNAが融合、グループのスマートシティ事業ビジョン誕生

INTRODUCTION

これまで、私たちは建設コンサルタントとして、日本国内はもちろん、世界のさまざまな地域のくらしや発展に必要な、さまざまなインフラストラクチャー事業を展開してきました。河川、ダム、道路、鉄道、港湾、空港、上下水道、電力など、その領域は多岐に渡ります。これら都市基盤づくりにおける業務で得た経験を集積し、私たちはスマートシティ開発に参入することにしました。最大の特徴は、「人にやさしい」ことです。最先端のテクノロジーを駆使しながらも、その土地が育んできた歴史やつながりなどを汲み取り、人に寄り添った新しい都市・街区の計画を提案していきます。

PROFILE

株式会社黒川紀章建築都市設計事務所/設計部/課長
藤澤 友博(ふじさわ ともひろ)

2011年入社。ゴッホ美術館増築設計業務(アムステルダム)、在ナイジェリア日本国大使館設計業務、日本工営ビルデザイン監修などに従事。現在、福井県立恐竜博物館監理業務等に従事。

株式会社黒川紀章建築都市設計事務所/設計部/課長
斎藤 織江(さいとう おりえ)

2007年入社。壱岐市立一支国博物館(長崎県)、日本芸術院美術品収蔵庫他、福祉施設・商業施設等に従事。現在、福井県立恐竜博物館監理業務等に従事。設計・監理を担当した深谷テラスヤサイな仲間たちファームが5月末にオープン。

株式会社黒川紀章建築都市設計事務所/設計部
高山 絵理(たかやま えり)

2019年入社。設計部に配属。入社より商業施設、集合住宅等のプロジェクトに従事。設計・監理を担当した深谷テラスヤサイな仲間たちファームが5月末にオープン。

日本工営株式会社/事業戦略本部/デジタルイノベーション統括部
藤永 誠司(ふじなが せいじ)

2021年3月入社。大手システムインテグレータで通信・公共交通・スタジアム・エリアマネジメント等、主に社会インフラ分野での海外営業・マーケティング・新規事業開発に従事。前職での経験を活かし、日本工営のスマートシティ事業の立ち上げプロジェクトを推進中。

※部署名および役職・インタビュー内容は取材当時のものです

STORY

インフラを再定義した、エンフラの時代がやってくる。

−−−日本工営のスマートシティ・プロジェクトは、2021年7月にスタートしました。各部署から高いモチベーションを持つ若手メンバーが集結。ゼロから『日本工営のスマートシティ』を作る作業を始めました。「スマートシティとは何か」「スマートとは何か」という、根本的なところから丁寧に議論を重ねた結果、たどり着いたのは、『Smart Enfrastructure for Unlimited Future』という言葉。これまで、インフラ事業で培った経験を、Earth、Ecology、Environment、Education、Energy、Evolution、Entertainment、Equality、Economyなど、社会課題の解決に結びつけていく宣言となっています。このコンセプトを導き出すまでの道のりは、どのようなものだったのでしょうか。

図 日本工営のスマートシティビジョン

藤永:グループ内を見渡した時に、100%子会社の株式会社黒川紀章建築都市設計事務所(以下、黒川事務所)の存在があり、黒川紀章先生が晩年に大切にしておられた、「新陳代謝しながら都市をアップデートしていく」というメタボリズムの考え方こそ、私たちが目指すべき道だと確信しました。これまでにも国土発展のためのインフラ開発を経験し続けてきた日本工営ですから、それらの知見を発展的に活用した街区の形成を目指そうと考えたのです。最初期の段階から黒川事務所にも声を掛け、インフラ各部署の若手選抜メンバーとともに、ゼロベースから思想を立ち上げていきました。『Smart Enfrastructure for Unlimited Future』のEは、Enableという言葉で総括できると私は考えています。また、メンバーたちからも、「インフラを扱う私たちが、インフラの概念そのものに挑戦する」「チャレンジングな姿勢を社内に波及させていきたい」「あらゆる世代が一丸となって取り組んでいく」「EmpowermentのEも実現していきたい」という意欲的な声が上がってきました。インフラストラクチャーの付加価値を最大限に引き出して、そこに住む「あなた」に役立つものにすることが、日本工営の使命だと考えています。

藤澤(黒川事務所):「スマートシティとは何か」というところから、チーム内での議論を始めましたが、それは非常に重要な時間でした。黒川紀章が提唱したメタボリズムと、日本工営がずっと手がけてきたインフラ開発は、人体にたとえることができます。建築は、まさに肉体の見える部分ですし、電気水道や道路などのインフラは人体内の筋肉や血管のようなものです。その両輪をこれからの時代に合わせ、しっかりと機能させる・再定義することに未来の都市があると考えました。
都市も人体の皮膚と同じく、経年により古くなっていきます。これまでは、スクラップ&ビルドや再開発という全面的に更新する方法が主流でしたが、今後は人体の皮膚のように、古い組織は役目を終えると剥がれ落ち、内部から新陳代謝(メタボリズム)によって新しい組織が生まれてくるような姿が理想です。そこで、黒川紀章の思想を参考に「都市を経営する」「スマートUD都市」「生態系と共生する都市」という3つの軸を決め、メンバーそれぞれが考える「スマートなもの」や「スマートではないもの」を、言葉やイメージで紡ぎ出していきました。右脳と左脳をそれぞれ使ったブレインストーミングを繰り返す中で、エンフラストラクチャー(エンフラ)という言葉が生まれたのです。
時代の流れが早い昨今、未来に思いを馳せると「スマートシティ」という言葉すら、生き残るものかわかりません。ですから、時代の変化にも負けない「強いビジョン」を作ることを目指しました。

高山(黒川事務所):仕事として取り組むことが決まったときに、「スマートシティとは何か」をあらためて調べ直しました。その結果、最先端技術と紐付けば、何でもスマートシティと名乗れる印象を受けました。日本工営の知見を整理すると、インフラに集約されますが、そこには最先端技術がありながらも、人と人との営みの姿が必ず存在しています。大切にしたいことは、「人」がそこにいるという事実。そのことを踏まえながら、実際にスマートシティを活用していく世代の日本工営の若手たちとワークショップを積み重ねていきました。言葉やビジュアルで各自に内在する「スマート」のイメージを表現し、マインドマップを作る工程を丁寧に行うことで、日本工営らしいコンセプトに仕上がったと感じています。

蓄積した知見と磨き続けた技術が、次世代のエンジニアの手でスマートシティとして花開く。

−−−さまざまな企業が、それぞれの価値観から推し進めているスマートシティの開発。その多くは、近未来のイメージが先行するものですが、日本工営では、過去、現在、未来をしっかりと橋渡ししていく開発に重きを置いています。それでは、具体的に日本工営が目指しているスマートシティとは、どのようなものなのでしょうか。

藤永:私たちは、「シティ=都市」を「人が集まって何かを営んでいるところ」と定義しました。ですから、将来はバーチャル空間も含まれる可能性があります。既存の自治体単位の地域はもちろん、ショッピングセンターなどの単位でも切り分けることができるため、街区という表現が最も適しています。
これまで、日本工営グループでは鉄道駅、スタジアムなどの大型収容施設といった都市のランドマークとその周辺地域の開発で、多くの実績を残してきました。現在、官から民への動きも活発になり、より、街区という単位で物事を見る時代が到来しています。利便性が高く人にやさしいことを基本として、付加価値の創出から、集客性や不動産価値の向上も含めて提案していきます。

高山:たとえば、いまが過渡期のデジタルデバイスなどは、高齢者の方々が使いづらくて困っておられます。一部の人が置き去りになることは仕方がないと考えるケースも散見されますが、日本工営グループの主要事業はインフラ開発。これまで、市民全体が受益者という業務をたくさん行ってきました。これからも、「可能な限り誰も取り残さない取り組み」を続けていくことは、自然にスマートシティ構想と結びついていくと考えています。

藤永:日本工営が解決していくスマートシティの課題は4つ。ひとつは、以前から私たちが取り組んできた「地域の活性化」を、より進化させていくこと。少子高齢化や人口減少の課題解決はもちろんですが、「移動の自由」というテーマで非常に議論が盛り上がりました。賑わいを生み出すことも大切ですが、それと同じく衰退する現実から目を反らさずに、すべての人にやさしい新陳代謝の提案を行っていきます。
二つ目は、持続可能なインフラ管理、省力化、自動化を強く推進すること。既存社会基盤の老朽化は喫緊の課題ですし、物流の最適化はまだ検討の余地が大きく残されています。『インフラ維持管理システム』などの弊社デジタルプロダクトを用いて、解決策を提示していきます。
三つ目は、防災における予防や復旧をこれまでにないレベルで実現していく計画です。一例としては、防災情報プラットホームの『防すけ』や人工衛星画像の解析による省力化を実現する『衛星情報サービス』、再エネ100%を目指しているエネルギー部門、SDGs評価ツールの『KIBOH2030』や『TSUMUGI@』などにより、次世代の街の在り方を提案します。
四つ目は、エネルギーの地産地消。ひとことで言うと、マイクログリッドです。アグリゲーション技術で再生可能エネルギーの未来を描きます。

藤澤(黒川事務所):人と自然、技術と自然の領域は、これから近付いていくと考えています。これまでにも、動植物の特徴を取り入れたプロダクトはありましたが、さらにこの傾向は進んでいくでしょう。互いがオーバーラップしあって、どこからが自然で、どこからが技術かわからないものほど、スマートなものになっていくのではないでしょうか。
私たちは今回提案したビジョンをもとに都市において、すべての人が使えるスマートな社会を実現していきます。その浸透には時間がかかりますが、楽しみやフレキシビリティなども含めて提案していきます。発展するもの、衰退していくもの、すべてを含めることが、スマートシティ社会における新陳代謝(メタボリズム)につながると考えています。

−−−若手メンバーが中心となって進めているスマートシティのプロジェクト。その議論の中で再発見した日本工営の存在意義は、「幸せな笑顔を増やすコンサルティング」でした。すでに素材は前身企業の時代を含めて約100年に渡り磨き続けています。その知見が総結集する日本工営のスマートシティにご期待ください。