日本工営のDX 従来の建設コンサルとは違った価値の提供へ

INTRODUCTION

近年、建設業界でのDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中、日本工営は2020年7月にデジタルイノベーション統括部を設立し、積極的にDXの取り組みを進めています。日本工営のDX戦略はどのような方向に向かっていくのか?デジタルイノベーション統括部の櫻庭統括部長に、インタビューしました。

櫻庭 雅明

PROFILE

  • 日本工営株式会社 事業戦略本部 デジタルイノベーション統括部 統括部長
    東北大学災害科学国際研究所 特任教授(客員)

    櫻庭 雅明(さくらば まさあき)

    1994年入社。入社以来、水理実験や数値シミュレーション、河川分野の情報システム設計・開発など、河川・海岸分野に従事。2004年3月に博士号(工学)を取得。2018年7月に中央研究所 先端研究開発センター センター長に就任後は、AIやデジタル応用技術に関する研究開発に着手。2020年7月より事業戦略本部 デジタルイノベーション部 部長(現、デジタルイノベーション統括部 統括部長)として、日本工営グループのDX全般を推進。

  • 部署名および役職・インタビュー内容は取材当時のものです

STORY

日本工営がDXを推進する上でのキーワードは「ビジネスプロセス再構築」、「価値創造」、「ネットワーク化」

―日本工営は、2020年7月にデジタルイノベーション統括部を設立し、従来のコンサルティングビジネスの考え方を超えた新たな事業開発の枠組みとしてデジタル技術の活用や推進、生産性向上においてグループ全体でのDXを推進しています。2022年7月には、日本工営グループのDX全般に関わり、社内の生産性革新、デジタルビジネスおよび技術の推進を行うための組織として、「デジタルビジネス推進部」、「デジタル技術推進部」、「DX推進部」を設置しました。これら3つの部を束ねるデジタルイノベーション統括部の部長である櫻庭さんは“DX”をどのように定義していますか?

櫻庭

2020年7月にデジタルイノベーション統括部の部長になって以来、「“DX”とは何か、特に建設分野や日本工営におけるDXとは?」を考えてきました。当初は“DX”を定義しようと考え、経済産業省やガートナー、その他海外の論文も含め調べていましたが、「常にその内容は更新されている」というのが、“DX”に対する私の考えです。

ただ、これらを基に考えていくと、日本工営がDXを推進する上でのキーワードは、“現時点では”「ビジネスプロセス再構築」、「価値創造」、「ネットワーク化」に集約されると考えています。「ビジネスプロセス再構築」は、新規ビジネスの創出やデジタルツールの集約、デジタルを活用した業務効率化です。「価値創造」は、一分野・単一的なことが多い建設コンサルタントのアウトプットを、複合的で今までにない価値を作り出していくための議論で、特にスマートシティは当社の総合力を活かして、分野を横断しながら、今までにないアウトプットを作っていこうという考えです。「ネットワーク化」は、いわゆるいろんなものを繋げていくものです。これらをキーワードとして捉えながら、攻めと守りの両面で今後の新たなビジネスプロセス構築を検討しています。

―日本工営のDX推進におけるテーマや軸を教えてください

櫻庭
日本工営は様々な経験と技術力があり、あらゆるテーマでDXを推進していくことができますが、これからの軸としてはやはり『スマートシティ』であると考えています。当社は既に、DXという枠組み超えてスマートシティ関連の案件に取り組んでいます。これまでの知見や強みを持っている「防災」、「インフラメンテナンス」、「モビリティ」や「エネルギー」といった技術をベースに、情報提供やサービス提供、日本工営としてのブランド形成を進めていきたいと思います。

DXプラットフォーム構想では、様々な企業とオープンイノベーションして進めていきたい

―現在既に取り組んでいるDX業務について教えてください

櫻庭

国内では、3Dモデルや3D化を行う支援業務や、自治体のDX推進計画の業務など、海外では、ASEAN各国のスマートシティに関するマスタープラン業務も受注しています。

また、現在取り組んでいるのが、DXプラットフォームの立ち上げです。先ほど述べた技術の中でも特に日本工営は「防災」において多くの業務を手掛けてきたため、高度な技術やノウハウを持っています。これを活かしてプラットフォーム化にも重点的に取り組んでおり、その一歩として、昨年の9月に防災分野の情報提供基盤「防すけ」という水防災プラットフォームサービスをリリースしています。「防すけ」は、当社の解析・予測技術により災害対応・避難行動・防災活動に必要な情報を一元的に画面上に集約し、地域の被害実態や浸水等の状況がリアルタイムで確認できるプラットフォームです。

このプラットフォーム構想を防災分野以外にも拡張し、当社がこれまでに蓄積してきた技術のデータに加え、衛星やIoTデータなど、ビッグデータとしてのインフラ情報を蓄積し、AIで分析できる環境を整えていきます。またこれらの開発には、社内各部署のほか、様々な企業とオープンイノベーションして進めていきたいと考えています。

これからは、従来の建設コンサルの思考とは違った価値を創造していく時代に

―建設コンサルタントが得意とする分野は、計画や解析、設計などが主であると思いますが、最近は先端技術のハードルが下がり、人間に変わってAIやツールが解析をしてしまう時代にすでになりつつあります。今よりさらに10年後、日本工営はどんなことができるようになっていると思いますか?

櫻庭
日本工営は、建設分野における「データ駆動型ビジネス集団」、建設分野の上流から下流までの工程を、データを使ってうまく繋ぐ仕組みを作ることができる集団になっていくと私は考えています。今は必要とするデータがあった場合、取りに行って取得しますが、将来的には、リアルタイムで必要なデータを取得できる仕組みが出来上がると考えています。

上記の図は、中期経営計画で描いているデジタルツインの姿です。日本工営には様々な分野に長けた専門家がおり、日本工営の総合力があれば、上流から下流(上記の①~⑥)のすべてを網羅することができると考えています。このデジタルツインの姿を組織として回していくことができる体制が、10年後にイメージしている姿です。

これからの時代は、従来の建設コンサルの思考とは違った価値を創造し、技術にどう付加価値をつけていくかを考えていくことが必要になると考えています。

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