インフラの寿命に立ち向かう! ~日本工営のインフラ老朽化対策~

(当社広報誌「こうえい」2014年 vol.63号より)

2012年12月に起こった中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故。

高度成長期に整備された社会インフラは長いもので造られてから50年以上経ち、その老朽化対策が課題となっています。

今回はインフラの老朽化に対する当社の取組みについてご紹介します。

メンテナンスの時代に先駆けて

構造物の診断調査の状況

国土交通省は平成25年をメンテナンス元年と位置付け、公共事業の方針を維持管理重視へと大きく転換させました。また、昨年11月に策定された「インフラ長寿命化基本計画」では、社会インフラを管理する全ての関係省庁が「待ったなし」の課題としてこの課題に取り組む方針を打ち出しています。

一方、当社のインフラの老朽化対策への取組みは、今から20年以上前、平成2年頃から始まっています。当時は、主に電力会社が持つ水力発電所の水路トンネルを対象とした診断技術を開発し、これを活用した点検診断業務を行っていました。

その後、非破壊調査・構造診断に関する技術研究を重ね、これらの技術をベースに、平成14年に社会インフラの調査診断を主な事業とする部署を立ち上げました。そして今年の4月に、事業規模の拡大と昨今の情勢変化を受け、インフラの整備から維持管理までに対応する組織としてインフラマネジメント事業部を新設しました。

これまで蓄積した技術や経験をもとに「構造物診断」「保全対策検討」「維持管理計画作成」「構造物管理の仕組みづくり」などの業務を広く実施しています。

我が国の経年化する橋梁数の推移
国土交通省道路局(道路施設現況調査 H22.4)をもとに当社作成

山積するインフラマネジメントの課題

我が国では、今後、予定供用年数を大きく超過した構造物が増えていくことが予想されています。上のグラフに示すように、今後20年で供用後50年経過した橋梁が4倍以上に増加する見込みです。

また、これらの老朽化した橋梁の 7 割近くは市町村が管理しています。笹子トンネルの事故を受け、インフラの老朽化対策に注目が集まり、予算もつくようになりましたが、限られた予算の中で膨大なインフラ施設をどう維持、更新していくのか、これを担う人財をいかに育成していくのか、課題は山積しています。

不可欠となるインフラマネジメントの効率化・高度化

これから膨大なインフラを管理していくためには、これまでと同じように人海戦術で点検診断を実施していたのでは間に合わなくなると考えられます。ここで注目されているのは、新技術による点検診断の効率化・高度化です。

昨年、当社は道路トンネル技術で協働をはかるため車両メーカーの(株)トノックスと技術連携をしました。同社が所有するレーザー計測システムは時速40~60kmで走行しながらトンネルの覆工表面画像を撮影するというもので、通行止めをしなくてもひび割れや欠損の状況を画像として記録できるのが特色です。これに当社の評価技術を重ね合わせることで、トンネルの健全性評価や優先順位など長寿命化計画の策定支援、道路トンネルの効率的な維持管理に資するサービスが提供できます。このほか、無人ヘリコプターを使った点検やセンサ技術を使った構造物のモニタリングなど、新しい技術開発も行っています。

また、水路トンネルは水力発電所だけでなく、浄水場や農業用水路などにもあり、道路トンネルよりも遥かに長い距離が存在しています。施設の中には 24 時間、365日水を止めることができない施設もあり、水を流した状態で点検を行う技術が必要でした。当社は農研機構農村工学研究所と共に、水流に乗って水路トンネルの内部を撮影・記録する装置を開発しました。この装置は、例えば地震が起こり、内部の状況がわからず、人が立ち入れない場合の一次的な点検などにも応用できると考えています。

道路トンネルレーザーシステムの計測状況
無人ヘリコプターを用いた構造物点検状況
無人水路トンネル計測システムの適用状況

メンテナンスサイクルの構築支援

社会インフラを適切に管理するためには、これに必要な体制や人員・人財を確保する必要があります。当社は、資格・研修制度の構築支援、維持管理データを管理するデータベースの構築支援などを行う予定です。また、自治体の長寿命化計画(行動計画)の作成、大学などの研究機関、地域の施工会社や調査会社と連携した地元密着型の社会インフラの管理の仕組みづくりについても積極的に携わっていきます。

自治体の長寿命化基本計画の策定イメージ

新しいインフラマネジメント事業の創出を目標に

当社の歴史を振り返ると、「戦後の海外雄飛」「高度経済成長」「環境重視・循環型社会構築」「IT革命」など社会情勢の変化を機敏に捉え、これを追い風にして発展を遂げてきたことがわかります。

そして、今まさに、日本の公共事業は大きな転換点に立っています。人口減少に伴い、新設の工事量は漸減しますが、社会インフラの管理・運用・更新においては多くのステークホルダーが関係します。その中で中立・公正の立場から、建設コンサルタントがその技術力を発揮して優先順位の設定や適正な対策を判断する場面が増えてくると思われます。また、インフラ老朽化対策は、建設コンサルタントとしての総合力のみならず、当社がエンジニアリング部門を有する利点を発揮できる分野でもあります。これらの背景のもと、日本工営は、今後とも世の中のニーズに応えるべく、努力と挑戦を続けます。

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