水車を回し、未来を拓く ~日本工営の小水力発電事業~

水資源が豊富な日本で見直されつつある水力発電。再生可能エネルギーの中でも安定した発電システムとして期待が高まっています。再生可能エネルギーを通じた地域への貢献、地域のニーズの実現に日本工営の技術者たちが取り組んでいます。

水力発電は日本工営の伝統分野であり、長年コンサルタントとして、機器メーカーとして関わってきましたが、2010年ごろから自ら事業者となる水力発電事業への取組みを本格化しました。その後、2011年の東日本大震災をきっかけに、固定価格買取制度(FIT)が施行され、再生可能エネルギー事業の大きな追い風となりました。2013年5月には新曽木発電所を完成させ、小水力発電事業の実績を重ねてきました。2016年7月の白滝発電所の運転開始で7ヶ所の小水力発電所が稼働することになりました。

各発電所の特徴

新曽木発電所(鹿児島県 伊佐市)

新曽木発電所―案内板で発電の仕組みを紹介

観光名所でもある「曽木の滝」には半世紀前ダムに沈んだ旧曽木発電所がありました。その旧発電所の取水口や沈砂池などを新発電所に活用しただけでなく、観光客の多い時間帯には取水量を調整して滝の景観に配慮するなど、環境にやさしい発電所へと生まれ変わりました。再生可能エネルギーの教育施設としても地域に活用されています。

高井発電所(長野県 高山村)

高井砂防堰堤―酸性の水の利用は地域の長年の課題でした

長野県を流れる松川は、自然由来および休廃止鉱山による酸性の河川で、魚類の生息は困難、農業用水としても利用できず、水の有効利用は地域の長年の課題でした。

高井発電所は、この松川の未利用水と既設の大型砂防堰堤の落差を利用することで発電を行い、時代に合った地域資源の活用を図ります。

白滝発電所(北海道 遠軽町)

町営白滝発電所は、2011年9月の台風で発生した洪水により水車、発電機、制御装置などが浸水し、運転停止を余儀なくされました。

当社は、2014年9月に遠軽町から既設設備を譲渡していただき、地域の要望である「発電所の再開」に向けて歩みを進めました。浸水した設備を新しいものに取り換え、以前よりも出力を増強して、運転開始しました。

小鷹水力発電所(鹿児島県 薩摩川内市)

小鷹水力発電所― らせん型の水車
見学を受け入れるためオープンなつくりに

水力発電には水と落差が必要です。低落差の開発可能地点は潜在的に数多く存在しますが、経済合理性の理由などからこれまで導入が進んできませんでした。

らせん水車は、比較的構造が簡易であるため、設置時のコストや維持管理の労力を削減できる可能性があります。当社は薩摩川内市と共同で実証事業を行い、水車発電機の効率、低コスト化の検討、魚類への影響、騒音対策などの、らせん水車導入時の課題となる項目について検証しています。

ダム ESCO事業(寺山ダム ESCO、塩原ダム ESCO、四時ダム ESCO)

ダムESCOの仕組み(イメージ)

ダムESCO事業は栃木県が考案した日本初の取組みで、ダム管理費の削減と再生可能エネルギーの有効利用を目的としています。

水力発電設備の計画、導入、製造、維持管理に関する技術、省エネルギーにおける ESCO事業等、豊富な実績に裏付けられた技術提案の結果、当社が第1号案件である寺山ダムESCO事業に特定されました。その後、同じく栃木県の塩原ダム、福島県の四時ダムでも運転を開始しています。

ダム ESCO事業の概略

  1. 1.
    自治体は、水力発電設備の設置場所などを民間事業者に提供。
  2. 2.
    民間事業者は、水力発電設備を導入し売電すると同時に、既存設備の省エネルギー化を図る。
  3. 3.
    民間事業者はダム管理にかかる電気料金を自治体に代わって支払い、売電収入から費用と利益を確保。
  4. 4.
    自治体は、ダム管理にかかっていた電気料金と民間事業者への委託料との差額分、コストダウンを図る。

EPC事業

間柏原発電所― リニューアルとともに旧水車・発電機を展示し、学習用施設としての利用を提案

当社が事業者となるだけでなく、顧客のニーズに合わせた形で、水力発電に関するソリューションを提供しています。その中でもEPC事業は、当社が一括で設計と施工を請け負うことで、発注者の負担軽減、コストダウン、早期FIT認定の取得、工期の短縮などといったメリットがある事業です。

宮崎県椎葉村の間柏原発電所は、老朽化により近年は最大出力が確保できず、修繕費用もかさむ状況にありました。当社は椎葉村と EPC契約を締結し、調査、設計、許認可取得、施工、機器納入のすべてを手がけました。さらに、維持管理のためのモニタリングサービスも行っています。

その他、水力発電設備を持つ民間企業などからも、それぞれの状況に合わせたリニューアルや機器納入の引き合いを多数受けています。

海外展開

小水力事業の海外展開も視野に入れています。インドネシア国チカエンガン川流域で計画中の小水力発電事業は、出力は7,200kWで、インドネシア版FITにより売電します。当社は、計画・事業化検討・設計・投資・資金調達・施工監理・事業運営・運転維持管理といった民間発電事業の全てを担います。

小水力発電事業の運営体制

2015年1月、「株式会社工営エナジー」を設立し、これまで地域ごとに5社あった水力発電事業会社を傘下に収め、事業運営の効率化と情報の集約化を図り、さらなる事業の拡大を目指しています。また、60年以上一貫して電力設備に関わるものづくりを行ってきた福島事業所も当社の小水力発電事業の中核として欠かせません。小水力発電に関する機器の更新・新設需要が高まる中、これまでの実績から今後も継続的に事業を推進することができると判断し、2014年11月に第二機電棟を新築して生産能力を増強しました。

地域に愛される発電所に

水力発電事業には、地域の人々の理解と協力が不可欠です。「地域の発展・活性化」を念頭に、地域に根差し、地域の方々に愛される発電所の運営をこれからも続けていきます。

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