電力系統の安定化 つくる・たくわえる・むだをなくす

(当社広報誌「Koei Letter」2017年6月期(通期)号より)

2016年、パリ協定(COP21)が発効され、気候変動の脅威に対する世界全体での対応の強化が打ち出されました。今後ますます再生可能エネルギー(再エネ)の導入と電源構成の変化が進むものと予想されます。一方で、太陽光や風力といった再エネは出力が天候に左右されることから、こうした発電設備を電力系統にそのまま接続すると、電力系統全体の電圧や周波数が不安定になるという課題を抱えています。

また、日本においては、電力システム改革により従来の大規模集中型電源から分散型電源へ移行することが見込まれます。

欧米諸国のように、電気を消費する側の需要家も電気の生産が可能となり、発電から消費までの電力系統全体の構造が大きく変わろうとしています。

日本工営グループは、このような変化と課題を新しい事業機会ととらえ、これからの電力エネルギー政策を見据えた技術開発に努めてきました。今回は、その一端を紹介します。

電気をつくる(創電)

日本工営グループは、調査、計画、設計から機器の製造および据付工事に至るまでワンストップで小水力発電所を開発してきました。その数は、日本全国で8ヶ所に及びます。

海外では、インドネシアで中規模の水力発電所建設に着工しているほか、シンガポールの水力発電事業者への出資を通じてアジア地域の中小水力発電事業を展開しています。

また、太陽光発電所に加え、バイオマスを使った混焼火力発電事業にも新しい組織を設置して取り組んでいます。

フィリピン国小規模石炭/バイオマス混焼火力発電所
福島県郡山市の既設の水道施設を使った小水力発電事業(未利用の水資源を有効活用)
鹿児島県薩摩川内市と共同で実証試験中の「らせん水車」(低落差、小流量での水力発電事業が可能)

電気をたくわえる(蓄電)

日本工営は、2012年から比較的規模の大きい定置型蓄電システムの構築と制御方法の開発にあたってきました。蓄電池は、非常用電源や一時的に電気を貯めるという以上に、電力系統を安定化させるという大きな役割が期待されています。

当社開発の制御装置は、電力需給に余裕のある夜間に電力を充電し、日中にそれを放電するというピークシフトや不安定な太陽光発電出力の安定化を実現しています。

このような、電力のピーク時の受電電力を緩和するということは、CO2排出量の多い火力発電所の発電電力を減らすことにも繋がり、 電気料金の削減効果に加えて地球温暖化対策としても注目されています。

構築した定置型蓄電システム
制御装置(当社開発品) リチウムイオン蓄電池100kWh
開発した制御装置による電力ピークシフト制御

電気のむだをなくす(節電)

日本工営は、無線やIoT を活用した監視・制御・計測技術をもって、蓄電池の充電・放電や空調・照明などの自動制御システムを構築しています。

空調や照明の節電制御と蓄電池の放電により、最大受電電力を低減する技術であり、この分野の制御システムの進化はますます重要となります。また、データを管理するとともにセンサーを活用し、電力の使用状態を「見える化」することを実現しています。

この技術は今後、デマンドレスポンスといわれる電力の需給調整サービスにとって根幹をなす技術となります。

次世代制御監視システム

日本工営は、次世代監視制御システムの構築に参画しています。東京電力パワーグリッド株式会社をはじめとする6社による戦略的なアライアンスのもと、コストダウン、国際標準化対応、他電力や海外への販売拡大に取り組んでおります。

当社は、次世代監視制御システムのうち、現地機器と上位システムを中継する重要装置である変電ゲートウェイ装置を開発しました。

電力系統の安定化に向けて

電力系統の安定化は、電力の需給バランスを一定に保つことが基本となります。

日本工営グループは、分散型電源開発、蓄電池を利用した電力の安定化技術およびIoT を活用したモニタリングシステムを基幹技術として、この問題に取り組んでいます。さらにバーチャルパワープラント(仮想発電所)実証事業への参加など将来を見据えた着実な事業展開を進めています。

今後は、世界の先進事例を参考にさらなる技術革新に努め、電力系統の安定化に向けた課題に引き続き挑戦してまいります。

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