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山岳道路建設技術の粋を結集。
ネパール『シンズリ道路』
プロジェクト

インドの北部国境に接するネパール南部のテライ平原とネパールの首都カトマンズを結ぶ『シンズリ道路』は、日本の国際協力機構(JICA)が手掛ける無償資金協力事業によって開通したネパール有数の幹線道路です。日本工営は、1986年の調査開始から2015年の全線開通まで、同プロジェクトの土木コンサルタントとして参加。このページでは、山岳道路建設の粋を集めた『シンズリ道路』プロジェクトの歩みを紹介いたします。

ネパール経済を支える「大動脈」を創造する

ネパール南部の穀倉地帯であるテライ平原からネパールの首都カトマンズに繋がる唯一の幹線道路は、長年、国の経済を支えるインフラとして機能していますが、同道路は、このふたつの地域を隔てる2,000m級のマハバラット山脈を避け、カトマンズの西側に大きく迂回していることや、集中豪雨による地すべりや土砂崩れの頻発によってたびたび寸断されることから、1960年代から効率性と安全性を兼ね備えた代替道路の建設が渇望されていました。
そこで日本政府は、新たな幹線道路建設実現の可能性を探る調査の実施を決定。日本工営はこのプロジェクトの初期段階から加わり、開発調査や全区間の基本設計、詳細設計、工事監理の面からこのプロジェクトを支えることになりました。しかしながら、ネパール第二の「大動脈」を期待された『シンズリ道路』の建設は、決して容易なものではなかったのです。

数々の困難に直面した山岳道路建設の舞台裏

『シンズリ道路』は、1986年にネパール政府からの要請で動き出し、開発調査を実施、技術的には建設可能でしたが、無償資金協力の規模には収まらないと判断され凍結。6年の時をおいて、改めてネパール政府から強い要望を受け実施された再調査では事業費を大幅に抑え周辺環境にも留意した「環境にやさしい道路建設」をコンセプトとして提案。無償事業としてようやくスタートを切ることになりました。
とはいえ、雨による地すべりなど自然災害が多発する地域で、沿道の緑化対策や環境保全に気を配りながら、高低差1,000mにおよぶ山脈越え、急峻な地形や脆弱な地質、川沿いの岩盤急傾斜地に安全な道路をつくるには大きな困難が伴います。しかしわたしたちは、現地技術者や作業員への技術指導に努め、地元の石材や人手を有効に活用できるガビオン擁壁の採用や工区の環境に合わせ、ジオテキスタイル補強土壁、アンカー工、法枠工、ロックボルト工など、多様な本邦技術や斜面安定工法を使い分けることによって、これらの困難を克服していきました。

ネパール初となるロープワークを駆使した斜面対策工事
日本の秀でた斜面対策工が結集

工事開始直後から、共産主義の台頭、民主化運動の激化、王政の崩壊に遭遇するなど、大きな時代の変化と重なるさまざまな工事への障害とともに歩む事業となりましたが、着工から20年を経た2015年3月、ついに全長160kmにおよぶ『シンズリ道路』は、全線開通の日を迎えたのです。
『シンズリ道路』の開通により、テライ平原からカトマンズまでの距離は一気に150kmも短縮され、移動時間にして9時間から5時間へと大幅に改善されました。これにより物流のみならず、教育、医療、行政、商業へのアクセス向上など、沿道住民約150万人の生活改善に大きな役割を果たすことになったのです。

ヘアピンカーブとつづら折りが輻輳する山脈越え

竣工直後の大地震でみせた『シンズリ道路』の真価

『シンズリ道路』の竣工がもたらしたのは、経済効果だけではありませんでした。竣工の翌月発生した大地震からの復興に大きな役割を果たしたのです。マグニチュード7.8の大地震は、ネパール各地に建物の倒壊や雪崩、土砂災害を引き起こし、9,000人を超える犠牲者を出しました。多くの幹線道路が不通になる中、余震の震源地に近く、断層をも跨ぐ『シンズリ道路』の被害は軽微に留まりました。そのおかげで、地震発生直後から地域住民の避難や援助物資の輸送の貴重なルートとして活用され、地域のいちはやい再建に貢献することができたのです。ネパール地震は同国の国民にとって不幸な出来事でしたが、『シンズリ道路』が地元経済に恩恵をもたらすだけでなく、地元民の生命や安全を守ることができる堅固なインフラであることが証明された瞬間でした。

『シンズリ道路』建設プロジェクトは、2015年10月、JICAが行う国際協力事業に貢献・協力し、途上国の人財育成や社会発展に尽力した事業・個人・団体の功績を称える『第11回JICA理事長表彰』を受賞し、いまも国内外からプロジェクトの成果に注目が集まっています。

急峻な斜面に設けたアンカー併用補強土壁
大崩壊地を避け高低差150mを駆け上がるムルコットつづら折り

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