信頼こそ成功の鍵。『アタパディ地域環境保全総合開発』プロジェクト
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1996年から2010年まで、インド南端に位置するケララ州パラカッド県のアタパディ地区で、日本の円借款による『アタパディ地域環境保全総合開発』プロジェクトが実施されました。この地区は、先住民の割合が大変高く、森林や農地の荒廃と貧困にあえいでいました。州政府や事業主体であるAHADS(アタパディ丘陵地区開発委員会)は、自然環境の回復や生計向上および先住民を対象とした住宅整備、教育の普及、職業訓練などを含む社会開発を住民参加型により実行しました。
インド南端の最貧困地域で実施したプロジェクト支援
アタパディ地区はかつて緑豊かな土地でしたが、平野部からの入植が進み、それに伴う無計画な開発による森林の荒廃と、もともと雨が少ないために回復力が弱い農地の荒廃の進行。そのことから、森林に生活を依存していたインドで法的に社会的弱者とされる先住民の貧困は著しく、アタパディ地区はケララ州で一番貧しい地区の一つとなってしまったのです。日本工営は1999年から2009年まで、事業主体であるAHADSとのコンサルティング契約に基づき、プロジェクトマネジメントや水文、環境、農業、組織開発の専門家に加え、住民組織能力強化のスペシャリストから成るコンサルタントチームを編成し現地に派遣。プロジェクト管理、AHADS職員への指導・アドバイス、住民組織の能力向上支援などによるプロジェクトの後押しを行いました。
手間と時間をかけ、住民の自発的な取組みを促す
このプロジェクトでは、活動実施主体として目的別に多くの住民組織が形成されました。実際の活動に着手する前の住民組織形成段階で、プロジェクトについての理解、住民組織としての決まりごとや、活動するために必要な知識を習得してもらう必要がありました。当初は言葉の壁や文化の違いから、コミュニケーションがすれ違ってしまい、プロジェクトの趣旨を理解して貰えない時期もありました。しかし、辛抱強く説明会を開催し、林地や農地の保全、苗木の育て方などの必要な知識や技術を繰り返し指導した結果、地域の人々はAHADSやコンサルタントに次第に心を開いてくれました。これにより彼らが主体となって、土砂崩れ対策や植林、灌漑施設、住宅、教育、医療の整備など、幅広い活動に取り組むようになり、その一連の流れの中で、地域の人々の能力向上は進み、特に先住民は技術的能力だけでなく社会的能力向上にも顕著なものがありました。
プロジェクトが契機となり地域の将来を担う人財も
プロジェクト実施期間中に、アタパディ地区が直面していたすべての課題を解決できたわけではありません。しかし森林の回復や女性の地位向上、住環境や教育環境など、生活基盤を整えることができたことは、貧困地域の発展という面からみても大きな成果といえます。さらにプロジェクトに関わったことをきっかけに、高等教育を受ける者や村議会議員になる者も現れたのは想定外の収穫でした。これも人財を育て、住民との間に信頼関係が築けたことの証といえるかもしれません。日本工営はこのプロジェクトで体得した、環境改善と社会開発を同時に行うという支援モデルを、現在、他のアジア諸国や中南米の国々で展開し、多くの地域で成果を発揮しはじめています。
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